環境総合研究所(ERI)は、環境科学や環境政策の専門家によるシンクタンクである。同時にNGOでもある。所長の青山貞一はシンクタンク一筋。ローマクラブ事務局時代の同僚、池田こみちと1986年にERIを設立した。現在、東京と大阪に研究所があり研究員は10名。地球物理で博士号をもつ者もいれば、政治経済学を専攻した者もいる。情報通信のプロもいる。留学生も受け入れている。
研究員に共通しているのは、環境分野で社会正義を実現すること、あらゆる場面で第三者的立場を堅持することだ。それらの理念を実現する道具としてコンピュータや情報通信機器を使いこなしている。さらに省庁、自治体や国公立研究機関に、多くのシンパがいるのもNGOとしてはめずらしい。
ERIの組織の上の大きな特徴は、「株式会社でNGO」を行っていることだ。営利部門と非営利部門をもっている。独自の技術や経験、ノウハウを駆使して財政的基盤をつくり、その基盤の上で第三者的なNGO活動を強力に推進する。これがERI流である。NGOであることが重要であり、NPOにこだわらない。
営利部門は、国や自治体の環境政策や環境関連制度の立案支援や環境シミュレーション技術を生かした業務を得意としている。川崎市環境基本条例と環境基本計画など、日本で最初の政策、施策、制度も多い。従来、大型コンピュータでしかできないとされていた大規模なシミュレーションやデータベース構築を数10万円のパソコン上で行うことに意を注いできた。近年は有害化学物質の規制や情報提供分野でがんばっている。
他方、非営利のNGOとして自主研究を多く手がけてきた。有名なものには「湾岸戦争の地球環境への影響予測」や「ナホトカ号重油流出の環境予測」がある。湾岸戦争では戦争勃発と同時に環境影響予測を開始、戦争終結とともにクウェート、ドバイに現地調査を敢行し、データは帰国直後すべて公表した。日本海重油流出時には、インターネットを使い現地からデータを入手、時々刻々と油隗がどう漂流するかをパソコンで予測、結果を逐次ホームページに情報提供した。
さらにERIを特徴づける活動に、環境弱者への専門支援がある。アドボケイト・プランニングと呼んでいる。米国で学んだものだが、設立以来すでに30件を超える活動を行ってきた。弁護士と連携することもある。ある大きな公害訴訟の控訴審では、自動車排ガス解析や高度なシミュレーションをもとに東京高裁の証言に立った。
開発事業者が行うアセスとは別に、住民団体の依頼による代替アセスを行い計画変更も勝ち取っている。恵比寿ガーデンプレイス、大規模都市再開発事業では、住民と事業者からの依頼で、5年に及ぶ本格的な環境事後調査とその結果の全面公表を行ってきた。
米国にいる友人は、ERIを「闘うシンクタンク」と呼んでいる。
いいえて妙である。
このようにERIは高度情報化社会における「第三者的機関」をめざし、グリーンピース顔負けの活動をすべて自前で展開している。その行動力と実績は、現在、国際的にも高く評価されている。
(日本環境法律家連盟 JELF、「環境と正義」、1998年5月号より)
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