−世界的電脳網環境研究職人組:ERI

International Intelligent Environmental Policy Think Tank ER

株式会社 環境総合研究所(ERI)
設立10周年にあたり

1996年6月
株式会社 環境総合研究所

代表取締役 所長  青山 貞

常務取締役 副所長 池田こみち


《はじめに−環境冬の時代に設立して、早10年》

 1986年、「環境冬の時代」に設立した株式会社 環境総合研究所(ERI)も1996年7月1日で創立10周年を迎えます。ERIは、それ以前の15年以上に及ぶ環境コンサルタントの経歴と実績をもとに、青山貞一、池田こみちの2名により当初設立された超ミニの「研究職人グループ」であると言えます。 

  私たち(青山貞一、池田こみち)は、この10年間、巻末に掲げます多くの看護婦さん(非常勤研究員)や若手インターン(研究員)の熱意ある参加と絶大な協力をえながら、ここまでやってきました。その背景には、私たちの”環境問題の解決に寄せる強力な信念とビジョン、シナリオ、プログラム”があったからだと思います

《スリムな「研究組織」と「研究職人」》

 環境問題と真剣かつ真摯に取り組むためには、大きな組織では困難なことが経験的に分かります。ERIは設立以来、今日に至るまで非常勤研究員を含め10名を超えたことはありません。組織についての基本方針は、現在も不変です。この基本方針は、バブル崩壊後、官民を問わず多くの組織が財政難、経営難に陥る中でとくに威力を発揮しています。 

  また、若手研究員の育成についても、徹底したERI流を踏襲し、”研究職人”としての素養、技能を磨くため、調査からシミュレーション、アセスメント、プランニングに至るまで、さまざまな分野で厳しい教育訓練、実地訓練を行っています。環境問題は、現場から乖離しては、まともな研究、対応が困難であるからです。

 

《10年間の研究活動》

 この10年間、ERIは、環境政策を積極的に支援する環境専門のシンクタンクとして、また、国公立、民間、大学を問わず環境関連研究機関が手がけない難題に敢然と挑戦する世界的NGOとして、いくたの実績をあげ高い評価をてきました。この基本方針は、今でも不変です。ERIにあっては、難題であればあるほど、やりがいがあるテーマであります。 
  • 自治体の環境計画支援

     自治体の環境基本計画の立案、アセスメント手法の開発、環境事後調査の実施など、環境問題の未然防止のためのプランやツールにおいて先鞭をつけてきました。そのなかには、基礎自治体で全国最初の総合的環境管理計画となった越谷市環境管理計画、政令指定都市で最初の環境基本条例、計画、計画アセス制度となった川崎市環境基本条例、川崎市環境基本計画、川崎市環境調査制度など、全国に先鞭をつけたものも数多くあります。 

     また、「環境にやさしい消費行動」の調査研究(東京都生活文化局)など、大量生産・大量消費の構造にメスを入れる調査やLCA(Life-Cycle Assessment)にかかわる環境解析などにおいても先鞭をつけています。 

  • 国の環境政策支援

     国の環境政策支援にあっても、ERIは環境管理計画に関連する各種手法開発(地域環境総合計画策定手法開発)、アセスメント手法の開発(計画アセスメント手法開発、環境影響評価手法開発、テクノロジーアセスメント手法開発)、自動車公害防止計画(自動車NOx法制定支援、NOx総量規制計画策定支援、自動車温室効果ガス削減調査、メタノール車の環境影響調査など)、未規制有害化学物質対策、市街地土壌汚染改善施策、広域環境管理指針策定(東京湾岸・大阪湾岸・伊勢湾岸広域大気動向把握など)など、主に未然防止の政策、手法開発を数多く手がけてきました。 

  • 環境予測手法

     航空機騒音予測、鉄道騒音予測、道路交通騒音予測、自動車排ガス予測などの専門分野で新たなシミュレーション手法を開発し、空港計画、鉄道計画、道路計画などに新たな知見を提供してきました。とくに、現地の実測データを生かして将来予測を行う手法の開発により、従来のアセスメントの予測精度をはるかに上回る精度が得られることで、被害者、住民団体を想定した具体的な環境保全対策の面においても数多くの足跡を残すことができました。このように、ERIは、とかく課題が指摘されている環境アセスメントの分野(定量的予測、評価)においても、新たな地平を築いています。 

《自主研究及びNGO活動

 一方、自主研究やNGO活動の分野でも、我が国の他のシンクタンク、国公立研究所が手がけない数多くの調査研究を自主研究として手がけ公表してきました。 
 「湾岸戦争の地球環境への影響予測」や「東京臨海副都心の環境影響予測」などは、その好例です。 

  また、今や企業の環境対策はISO14000シリーズが中心となっていますが、ERIでは、企業の環境認識、活動を詳細にわたり「ECODAS」(Eco-business Data Aquisition System)として世に公表してきました。さらに、国連会議はじめ世界各地で開催される環境関連会議にNGOとして参加し、我が国の経験、抱える課題をスピークアウトしてきました。今年もトルコのイスタンブールで開催されました国連ハビタットUに参加し、我が国の都市、住宅、交通、土地利用問題をNGOの立場から発言してきました。 

  さらに、国交がない中華民国(台湾)などへの民間環境技術協力を積極的に押し進め、中山高速公路の計画アセス、環境アセス支援はじめ実質的な環境配慮を現地スタッフとともに行い、高い評価を得てきました。 

  ところで、日本における環境問題の原点は言うまでもなく、水俣病、四日市喘息などに象徴される公害病、公害事件です。これについても、ERIは「川崎公害訴訟」原告団からの委託調査として大規模なシミュレーションを敢行し、東京高裁において証人として出廷し、戦後の高度経済成長の下での産業優先政策が結果として地域における大気汚染患者の増加をもたらしたことを高度なシミュレーション結果から立証するなど、他のシンクタンク、大学関係者では引き受けない難題にも正面から第三者調査権吸機関として真面目に対応してきました。 
 足下の公害問題の解決なくして、環境優等生としての日本などありようもないからです。日本ではけっして公害の時代は終わっていません。

 

《最新ディジタルネットワーク技術を駆使したシンクタンク》

 ERIは設立以来、パソコンはじめマイクロエレクトロニクスやネットワークを駆使した「電脳網環境研究職人組」として活動し、絶えず時代の最先端を歩んできました。過去10年間開発し続けた高度で高速なパソコン環境シミュレーションシステムは、現在でも世界的に通用する一級品であると自負しています。 
 この分野は、5年前から鷹取 敦、葛城直樹らの若手技術者の参加をうることにより、一層の技術の革新が見られました。25種を超えるパソコン情報システム(シミュレーション、データベース、画像処理、解析等のソフト)は、現在、自治体の現場で手足として使われています。 

  世はインターネット、情報ハイウェーの時代、高度情報化社会に突入しています。 
 ERIは、全国規模の環境専門のパソコン通信ネットワーク、E−NETを7年前に開設すると同時に、調査研究組織にも積極的にネットワークを取り入れ、在宅研究をいち早く可能としてきました。これはたとえば、所長である青山貞一が気管支喘息で倒れ在宅を余儀なくされたときでも、調査の指示や研究成果の品質管理を在宅で可能とするなど大きな威力を発揮してきました。 

  ERIは、インターネットに象徴される情報ハイウェーをもとに、「コンピュータ民主主義」を実現すべきと考えてきました。対話型情報交流を可能とするコンピュータ通信を生かす上で、市民参加、情報公開の主要な道具とすることは急務です。

《自然と共生するERIのライフスタイル》

 以上に加え、ERIは太陽光発電、風力など自然がもつエネルギーを化石燃料、ウラニウムなどハードエネルギーの長期代替と考え、家庭や民生分野で積極的、具体的に利用するために、さまざまな実験、実用を試みその成果、データを公表してきました。また、科学技術庁の原子力円卓会議など公の場においてNGOの立場、市民の立場から情報公開の必要性、政策立案の透明性の確保などについて発言してきました 。
 これは、地球温暖化による地球規模の危機とともに、原子力廃棄物がもたらす未曾有の影響を考慮すればできるだけはやく、ソフトエネルギーによる社会構築が必要となることは明らかです。 

 また、オフィス、研究員の自宅などにおいても自然系エネルギー利用を推進しています。1996年春に竣工した所長の自宅では東京都品川区の密集地にありながら、風力発電及び太陽光発電システムが設計当初より建築計画に組み込むなど、まさに隗より始めています。 

《これからのERIに大いにご期待ください!》

 今後、21世紀に向け、地域から地球まで環境問題に果敢に取り組む「研究職人」グループとして、ERIはなお一層努力し、世界に冠たるシンクタンクそしてNGOを目指す所存です。 

  どうか、ERIの今後の活動に、なお一層のご支援をお願い致します。