エントランスへはここをクリック   

御嶽山水蒸気大噴火に伴う

警告防御体制の本質的課題

<概要>

青山貞一 Teiichi Aoyama *1,*2
池田こみち Komichi Ikeda *2
鷹取 敦 Atsushi Takatori *2
*1 東京都市大学名誉教授
*2
環境総合研究所(東京都目黒区)

June 6, 2015、
大幅拡充 September 28, 2015

独立系メディア
E-wave Tokyo
Alternative Media E-wave Tokyo
無断転載禁
 
 以下は環境行政改革フォーラム論文集の2015年(CD)版に投稿を予定している論文の概要である。

 2014年9月27日、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山(標高3067m)が水蒸気爆発を起こし、噴石などにより登山していた57名の尊い命が失われ6名が今なお行方不明となっている。2015年の夏になって再度、行方不明者の捜索が再開されたが、新たに発見されたのは1名にとどまっている。したがって、2015年9月27日時点で、58名がなくなっており5名が以前として行方不明となっている。
 
 青山、池田、鷹取の環境総合研究所(東京都目黒区)は、この間、犠牲者の一部遺族と9回打ち合わせをもつとともに、大噴火と多くの登山者が亡くなられた背景、原因などについて多面的に自主調査をすすめてきた。

 とりわけこの御嶽山の大事故では、いうまでもないことだが、@<噴火警報レベルが1>であったがために多くの人々が登山したこと、御嶽山の大噴火では、水蒸気噴火によるA<噴石により頭部など身体を直撃した>ことが主な死亡原因であることが分かっている。ちなみに浅間山、白根山、阿蘇山などでは「シェルター」が設置されているのに対し、御嶽山ではまったくそれらの緊急避難設備がなかったこともある。

 下は北海道大学で開催された火山爆発問題の講演会におけるパワーポイントの一部である。「世界の火山噴火の報告によると、噴石の落下によって被飛び地が死んだ事例はまれである」とある。


出典:北海道大学における講演会のパワーポイントの一部

 本件に関連し、私達は情報収集などとは別に長野県木曽町で2015年3月に開催された名古屋大学、北海道大学、産業総合研究所の研究者による講演会にも東京から片道4時間以上掛け出席した。また当該分野の研究者らによる御嶽山大噴火が多数の犠牲者を出した原因などについてのコメント、講演などについても情報収集した。

 下は御嶽山火山活動地域学習会で講演する名古屋大学大学院の山岡教授である。


御嶽山火山活動地域学習会で講演する名古屋大学大学院の山岡教授
2015年3月15日 長野県木曽町
動画撮影:鷹取敦 


御嶽山火山活動地域学習会で講演する名古屋大学大学院の山岡教授
動画撮影:鷹取敦 


御嶽山火山活動地域学習会で講演する名古屋大学大学院の山岡教授
動画撮影:鷹取敦 


御嶽山火山活動地域学習会で講演する名古屋大学大学院の山岡教授
動画撮影:鷹取敦 

 大事故当初から火山噴火予知連絡会の藤井会長等は、御嶽山の爆発が水蒸気爆発あったことが、火山噴火予知を困難としていることを繰り返し公言してきた。しかし、上述のように水蒸気噴火によって噴石が飛散し人の頭部を直撃するが死亡の主たる原因となっていることからすれば、予知連絡会が水蒸気爆発を過小評価してきたこと自体問題であることは言うまでもない。たとえ水蒸気爆発であっても、日本の火山爆発史上最大の犠牲者を出していることからすれば、一体、何のための火山噴火予知連絡会であり、何のための予知であり、警報なのか、また気象庁の存在意義ははんのかが、問われれて当然であろう。

 人間にとっての最大のリスクはいうまでもなく死(Death)ある。学者や気象庁がいくら水蒸気噴火を過小評価してきた(いた)としても、現に56人もの犠牲者をだしている事実がある。であるならこの現実を彼らはどう考えるのであろうか? またいくら地震関連に比べれば観測、調査などの予算が少ないという声が聞こえてくるが、果たして本当に予算の問題なのであろうか? 

 他方、私達は昨年から気象庁、長野県、名古屋大学などへの情報開示請求や情報提供要請の支援を行い、さらに地元信濃毎日新聞による長期連載記事の収集、解読、さらに水蒸気爆発を含む火山理論、噴火メカニズム、それに伴う火山地震の計測方法、観測機器、機器の配置、メンテナンスなどについて詳細に調べた結果、レベル1に放置したことのさまざまな理由、原因が見えてきた。


出典:東京新聞 2014年10月3日


出典:毎日新聞 2014年10月2日

 本論では、噴火警報レベルが1であったことにより、多くの登山者が犠牲になったことに鑑み、なぜ、噴火警報レベルが1であったのか、その根拠、そして技術的、行政的手順についても法的、行政的背景を含め徹底的に調査し論考を取りまとめた。

 上記のなかで、いわゆる<2008年問題>があることが分かった。

 そこでは、水蒸気噴火への火山噴火予知連絡会、気象庁などの過小評価に加え、御嶽山山頂から周辺地域における地震関連計測のあり方、計測装置の設置位置の妥当性、また火口付近の計測器が噴火より1年前に故障しながら長野県が補修あるいは観測器、通信機器を交換しないばかりか、代替措置を執らなかった事実がある。


御嶽山観測点の配置図  出典:気象庁
大噴火の一年前から故障し報知されていたのは 御岳山頂(長)■ ...青山記

  以下は朝日新聞の記事の全文。

◆御嶽山頂の地震計、昨夏から故障 噴火時、観測できず(朝日新聞)
http://digital.asahi.com/articles/ASG9Y76JCG9YULBJ01X.html
熊井洋美 2014年9月30日15時02分

 御嶽山の山頂付近に長野県が設置した地震計が、昨年8月から故障で観測できない状態だったことが30日、わかった。老朽化で故障したが、火山観測で連携している名古屋大が秋にも山頂に新たに地震計の設置を準備していたため、県単独の更新を見合わせていた。

 気象庁火山課によると、御嶽山では1979年の有史以来初めての噴火を受け、88年に常時観測を開始。現在、同庁のほか長野、岐阜両県、名古屋大、防災科学技術研究所などが12カ所に地震計を設置、他にも傾斜計や空振計、衛星測位システム(GNSS)など複数の計器が備えられている。データは、気象庁に常時提供され、活動の監視に使われている。



 地震計のうち火口に最も近いのが、長野県が管理する「御嶽山頂」観測点だ。県砂防課によると、84年の長野県西部地震による土砂災害を受けて、土砂災害を防ぐ目的で97〜00年度に山頂を含めた3カ所に地震計を設置。補修を繰り返して使ってきたが、昨年6〜8月、うち山頂を含む2カ所が故障した。

 山頂は、寒暖差が激しく、雷などの被害にも遭い、一般的に機器の維持管理は難しいという。

 1年以上も新しい地震計が設置されなかった理由について、県砂防課は「連携する名古屋大と協議を続けていた」と話す。故障した地震計のうち、入山規制区域外にある1カ所は、名大と協力して、10月上旬にも設置が完了する見込みという。

 御嶽山の観測データは、気象庁が24時間態勢で監視している。火山課の担当者は「山頂の地震計が観測できていれば、いくぶん精密に変化がわかったかもしれないが、噴火警戒レベルを上げることができた可能性は低い」と話している。

 研究者からは「山頂の地震計があれば、もう少し早い段階で噴火の予兆がつかめたかもしれない」という声があがる一方、「故障の放置は好ましくはないが、大切なのは監視にあたる職員がデータを読み取る力を向上させることだ」と指摘する。(熊井洋美)

 観測機器の維持管理に加え、地震関連計測データを気象庁が処理し長野県などに送っているのか、またそれらのデータからどのような手順、また、解析・評価に基づいて噴火警報レベルを設定し、公表しているのかについても調査を進めた。

 ちなみに、2008年、気象業務法が改正され、噴火警報レベル分けが1〜5に変更となっているが、その際にレベルを1,2,3..などと 警報レベルを判断する根拠と方法が変わったことがある。

 ある情報によれば、2008年に決められた方法は、人間が総合的にレベルを判断するのではなく、いわば現場で計測された客観的データをあらかじめ設定した指標によって自動的に判断する方法に変えたという。

 これは人間の恣意的判断を排するという意味において一見科学的、合理的なものと思える。しかし、改正気象業務法がによる方法が成立する前提として、観測、観測されるデータの計測位置、計測方法、計測機器そしてそれらの維持管理、さらに観測ポイントの数などが万全でなければならない。もし、それらの科学的、技術的な妥当性が損なわれれば、当然のこととして、結果は変わってくる可能性があるからだ。本来、レベル2であるべきものが、上記の不備あるいは欠損、結束などによりレベル1となっていたとすれうば、致命的である。

 この改定気象業務法の変更については、火山学者はこぞって反対したそうだが、気象庁に学者らが何を言っても気象庁側がとりあわなかったという情報もある。御嶽山の噴火が起きて「案の定」想定された不安が的中したという見方もあるようだ。

 いずれにせよ、御嶽山の火口付近に設置していた長野県の観測器が事故の約1年前から故障しており、新しい観測機に交換されず、また修理もされず1年間にわたり放置されていた事実はいかんともしがたい事実である。もちろん、仮に火口付近に設置した観測器が正常に稼働していても、レベルが1であったかも知れないという蓋然性は排除できない。

 しかし、この間、気象庁、長野県、大学関係者は、上記の仮説についてまともなシミュレーションはじめ検証調査、追跡調査などをしてきたかと言えば、どうみてもしているようには思えない。

 すなわち、昨年の9月以前に長野県が火口付近に設置し正常に稼働していたときのデータと、それ以外の気象庁、長野県、大学などが設置した観測データの重相関を分析することにより、ひょっとすると正常に稼働していれば、レベル2になってもおかしくないという結果がえられたのではないかという仮説について、その検証作業に真摯にとりくんできたかということである。

 今まで調べたところ、どうみてもそのような追跡調査、検証をしているとは思えないのである。そればかりか、開示された情報によれば、大学の火山噴火の研究者が長野県が置き去りにしている観測器を早く修理するなり交換することを2013年の段階で長野県に進言しても、予算の関係などからまともな対応をせず、データを地上に送る衛星を用いた送信システムについても同様に対応していないようだ。

 もし、上記が事実であるなら、明らかなる不作為(すべきことをしないこと)を超え、過失であると言えよう。常識的に考えて今まで設置していた火山用観測装置が故障した場合、ただちに修理するか新しいものにリプレースすべきであろう。

 以下は情報開示により得た上記に関連する情報の一部である

◆2013年6月26日付けの●●大学から長野県へのメール
  主題:御嶽山(大滝村滝越地籍)地震観測機器の不具合について











以下は観測機器の維持管理、保守をめぐる長野県と大学との間でのやりとり


 
 以下は関連する北海道新聞の記事です。


出典:北海道新聞 2008年10月11日、10月21日


出典:北海道新聞 2008年10月11日

 実際、この分野では気象庁に権限が集中し中央集権となっているようだ。

 この改定気象業務法の方法だと、仮に学者、専門家らがレベルを上げたいと思ってもあげられない。箱根山の噴火では、 御嶽山の教訓からか?改定気象業務法方法の方法によらずレベル2となったが、これは本来は正規の方法で はないとされている。

 改定気象業務法の新方式に対応するには、上述のようにデータが重要だが、御嶽山では機器が故障したまま、とされていたこと、また、仮に観測機器の故障や設置位置の不備などからデータが不足している場合には人が総合的な観点から判断(補完)できるようになっていないと、今回の御嶽山大噴火のような大事故が起きる可能性がある。

 以下は2008年気象業務法が改正概要。出典は気象庁。








以下の出典は名古屋大学地震火山観測センター