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米大手石油会社がベネズエラ

の「勝利」を信じない理由


あらゆる努力と騒ぎにもかかわらず、マドゥロ大統領の誘拐は、
期待された政権交代には至らなかった。そして、エネルギー
業界のトップ幹部は、このことをよく知っている。

Why American Big Oil isn’t buying the Venezuela ‘victory’
Despite all the effort and fanfare, the kidnapping of Maduro wasn’t quite the regime change expected and top energy executives know this


RT War on Ukraine War #9256
2026年1月15日5
英語翻訳 池田こみち
独立系メデア E-wave Tokyo 2026年1月16日

2026年1月10日、ベネズエラのカラカスで、ニコラス・マドゥロを支持する抗議行動中に、
デモ参加者が巨大なベネズエラ国旗を掲げています。© Carlos Becerra / Getty Images「

2026年1月15日 17:50 ワールドニュース

著者:フィニアン・カニンガム、受賞歴のあるジャーナリストであり、『Killing Democracy: Western Imperialism’s Legacy of Regime Change and Media Manipulation (民主主義の殺害:西側帝国主義の政権交代とメディア操作の遺産)』の共著者。25 年以上にわたり、The Mirror、Irish Times、IrishIndependent、英国のIndependent などの新聞で、副編集長および記者として勤務。


本文

 ドナルド・トランプのベネズエラ作戦は、すべてが順調に進んでいる。麻薬テロリストの独裁者とされる人物が逮捕され、ニューヨークの法廷で裁判にかけられ、地球上で最大の石油資源は現在、米国の所有となっている。少なくとも、トランプ氏自身はそう述べている。

 「我々は石油ビジネスに携わっている」と、彼は数十億ドル相当のベネズエラ産原油が米国に向け出航したことを発表した後、トランプ大統領はこう述べた。「ベネズエラ人とは話さないで、私と話してくれ。」、と先週ホワイトハウスに集まった大手石油会社の幹部たちに彼は語った。

 問題は、大手石油会社がそうは考えていないことだ。エクソンモービルとコノコフィリップスの最高経営責任者(CEO)は、急いでベネズエラに戻るつもりはない。

 トランプ大統領は先週金曜日、石油業界のトップをホワイトハウスに招き、ベネズエラの石油・ガス産業の近代化に1000億ドルを投資するよう促した。数十年にわたる米国の経済制裁が、同国の産業インフラの劣化を招いたと見られている。

 ベネズエラの石油産業は2004年から2007年にかけ、社会主義者のウゴ・チャベス前大統領によって国有化された。この政策は後継者のニコラス・マドゥロ政権下でも継続され、マドゥロ大統領は1月3日、米特殊部隊がカラカスの自宅を襲撃した際に拉致された。

 ベネズエラ石油産業が国有化され国営ペトロレオス・デ・ベネズエラ(PDVSA)が運営を開始すると、米石油大手エクソンとコノコは同国での事業から撤退した。両社は後に米裁判所に提訴し、ベネズエラが収用資産として130億ドルを支払うべきとの判決を得た。米第3位の石油会社シェブロンはPDVSAとの提携でベネズエラでの事業継続を選択した。

 先週のホワイトハウス石油サミットで、エクソンとコノコ幹部はトランプ大統領に対し、投資リスクを理由にベネズエラ復帰の準備が整っていないと伝えた。

 エクソンのダレン・ウッズ最高経営責任者(CEO)はベネズエラを「投資不可能な国」と表現。ウッズ氏は次のように述べた: 「我々はベネズエラで非常に長い歴史を持つ…資産を二度も接収された。三度目の再参入には、これまでの経緯や現状から見て、かなり重大な変化が必要だと想像できるだろう。」さらに「現在のベネズエラの法的・商業的枠組みを見ると、投資不可能な状態だ。したがって、商業的枠組みや法制度に大幅な変更が加えられ、持続可能な投資保護が確立され、同国の炭化水素関連法が改正されなければならない。」、と述べている。

 エクソンCEOの発言はコノコフィリップスのライアン・ランス社長も同調し、「PDVSAを含むベネズエラ全体のエネルギーシステム再構築すら検討すべきだ。」
と述べた。

 これは、ベネズエラが米国の支配下にあるとは程遠いことを意味する。

 マドゥロ大統領は拉致されたかもしれないが、ベネズエラ政府はデルシー・ロドリゲス暫定大統領のもと、マドゥロ政権時と同じ行政体制で継続している。ロドリゲス暫定大統領とウラジミール・パドリノ国防相を含む側近たちは米国の侵略を非難し、マドゥロ大統領と夫人の安全な帰還を要求している。

 ベネズエラは崩壊しておらず、社会主義政府も打倒されていない。マドゥロ拉致のために推定6億ドル以上を投じて展開された多数の軍艦と1万5千人の兵士、さらに200人の特殊作戦コマンド部隊は、ピュロス勝利をもたらしたようだ。

※注)「Pyrrhic victory(ピュロスの勝利)」とは、甚大な犠牲を払ってかろうじて勝利を手に入れること、つまり割に合わない勝利や敗北と大差ない勝利を意味する言葉。古代ギリシャのエピロス王ピュロスが、ローマとの戦いで勝利を重ねるたびに兵力を消耗し、「もう一度勝てば全滅する」と言った故事に由来する。(Google AI)

 大石油会社の視点から見れば、これは「任務完了」ではない。ベネズエラは「投資不適格」だ。これは資本主義的な言い方で、石油会社が望むもの――ベネズエラの炭化水素資源に対する完全な支配権――をもたらす政権交代が起きなかったことを意味する。

 大手石油会社は2024年のトランプ大統領選挙運動を支援した。ベネズエラを掌握することはその取引の一部だった。しかし、各社の最高経営責任者が大統領に伝えているところによれば、大統領は彼らが南米の国に再び進出する自信を持てるほど十分な成果を上げられなかったという。

 これが週末のトランプ氏の苛立った反応の背景だ。フロリダからワシントンに戻る途中、記者団からエクソンがベネズエラ再進出に1000億ドルを投じるのを渋っている件を問われると、大統領専用機内でこう応じた:「エクソンの返答は気に入らなかった…小賢しいことをしている」。不満の表れとして、トランプ氏は今後エクソンのベネズエラ再進出を阻止すると述べた。

 石油大手は、ベネズエラ作戦に関する勝利パレードに水を差した。

 この劇的な襲撃作戦はカラカス政権を変えなかった。現地で取材する独立系ジャーナリストのカミラ・エスカランテは、ロドリゲス暫定政権がマドゥロの政策を継続していると報じている。石油大手幹部は、この評価に同意しているようだ。

 トランプが数隻のタンカーを乗っ取る代わりにベネズエラの石油資源を掌握したいなら、新政権樹立のため米軍を大規模侵攻させる必要がある。これには膨大な、おそらく耐え難い政治的・軍事的コストが伴うだろう。

本コラムにおける発言・見解・意見は著者個人のものであり、RTの見解を代表するものではない。

本稿終了