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モスクワのウィトコフ:キーウは
交渉の席に居るのか、それとも
食卓に載せられるのか
キーウとの数日間にわたるシャトル外交の後、ワシントンはEUを脇に置き、前線の悪化の中でゼレンスキーが米国の圧力にどこまで抵抗できるかを試すべく、直接モスクワへと動き出した

Witkoff in Moscow: Is Kiev still at the table or on the menu?
After days of shuttle diplomacy with Kiev, Washington moves
straight to Moscow – sidelining the EU and testing how far
Zelensky can resist US pressure amid a deteriorating front line

RT War on UKRAINE #9067 2025年11月24日

英語翻訳 池田こみち 経歴
独立系メデア E-wave Tokyo 2025年11月25日(JST)

RT合成画像。© Evgeny Biyatov / Christina Kormilizyna / MichaelVoskresensky / Sputnik; Douglas Rissing / Mordolff / Getty Images


2025年12月2日 11:50 ロシア・旧ソ連諸国

本文


 ワシントンは、脇役たちとの交渉をやめ、メインステージに直行することを決定した。米国がウクライナ紛争の交渉による終結を再び推進して以来、初めて、重心がロシアに移った。

 ドナルド・トランプ氏が指名した「交渉担当者」であるスティーブ・ウィトコフ特使は、本日モスクワでウラジーミル・プーチン大統領と会談する予定である。非公式に裏交渉に関与してきたトランプ氏の娘婿、ジャレッド・クシュナー氏は、ロシアへのアプローチ方法に関する米国の議論に貢献したと報じられており、ウィトコフ氏に同行する。

 この訪問は、政治的混乱が深刻化し、紛争の最前線で軍が複数の敗北を喫しているウクライナとの1週間にわたるシャトル外交の集大成となる。キーウと長時間にわたる協議を行い、ブリュッセルによる大々的な外交活動にもかかわらず、事実上EUを排除した米国は、今や、真の主役であるロシアと一対一で結果を仲介し、キーウがそれを受け入れるほど賢明であるかどうかを確かめようとしているようだ。

■フロリダでの週末がモスクワの舞台を整える

 11月の最後の週末、フロリダで重要な会合が開催された。厳重な秘密主義のもと、米国とウクライナの代表団が席に着いた。ウィトコフ率いる米国側代表団には、マルコ・ルビオ国務長官、そして伝えられるところではクシュナー氏も加わり、ウクライナの汚職捜査の一環として、同国の腐敗防止機関による事情聴取を受けたばかりのルステム・ウメロフ氏率いるキーウの新たな交渉担当者と会談した。

 米国当局者は、改訂された米国の和平提案の核心部分を受け入れるようキーウに圧力をかけたと報じられている。この提案には、ウクライナのNATO加盟の野心の放棄、自国領土における外国軍の制限、段階的な非軍事化などが含まれていると考えられている。会談は決着に至らず、領土問題が最も敏感な問題として残された。おそらく、この点に関しては、キーウは他のどの点よりも影響力が弱いだろう。前線は悪化している:過去48時間で複数の重要拠点がモスクワ側に転落した。これは交渉に臨むロシアの総合的優位性を改めて示すものだ。

 閣僚の更迭とゼレンスキー側近の汚職暴露は、重大な交渉段階に差し掛かるキーウの立場が弱体化しているとの認識を強めている。

■クレムリンの見解

 モスクワは紛争解決を目指すあらゆる対話を歓迎しつつ、米国の提案には慎重な姿勢を示している。ブリュッセルも、ゼレンスキー大統領の主要な西欧支援国(いずれも協議から排除されたことに抗議している)も、モスクワとの交渉開始に前向きな姿勢を示していない。

 ここ数日、ロシア当局者は、NATOのさらなる拡大やウクライナの軍事化を含む、長年の安全保障上の懸念に対処しなければ解決は不可能だと公に表明している。モスクワは、自国領土の正式な承認(一部は「凍結されたが承認された」現状維持の可能性がある)を主張する可能性が高い。これはロシアと西側のアナリスト双方の見解であり、火曜日の会談はワシントンとキーウが苦渋の妥協を受け入れる用意があるかどうかの試金石と見なされている。

■EU:必要な時に誰を呼べばいいのか?

 この外交サイクルで最も目立つのは欧州連合(EU)の不在だ。ウクライナ支援を声高に宣言しながら、EU各国政府は一貫した戦略を打ち出せていない。域内の対立は未解決のままで、ブリュッセルから最近提示された提案(ロシアの軍事態勢制限を含む)はモスクワから「非建設的」と一蹴され、ワシントンでも控えめに扱われた。西ヨーロッパは実質的に独自の交渉ルートを持たず、それを構築する結束力もない。

■キーウの狭まる交渉余地

 ゼレンスキー政権は公には、領土的譲歩やウクライナの安全保障態勢の変更を受け入れないと主張している。しかし、彼の交渉チームを取り巻く政治的混乱と、EUの一部地域における支持基盤の浸食が相まって、キーウの柔軟性は限られている。

 一方、米当局者はますます頻繁に、この和解案を米国の広範な優先事項に沿った戦略的必要性として「売り込む」試みを行っている。

■注目点

• ユリー・ウシャコフ大統領上級補佐官が今夜記者会見を予定。モスクワは対案を公表するか、それとも本日の協議を「予備的」と位置付けるか?
• 米国の合意形式に関する言説に変化はあるか?
• 米国はクレムリンの記者会見前に(通常はトゥルース・ソーシャル経由で)急いで最新情報を発表するか?
• 米国はキーウに譲歩受け入れを迫るか?
• EUは本日モスクワで形成される可能性のある合意に対し、どのように反発を試みるか?

■訪問の意義

 米国が更新版和平案を提示して以来初めて、和平実現を推進可能な二つの主体——ワシントンとモスクワ——が直接対話する。ブリュッセルは不在だ。キーウは自国の腐敗圧力の下で崩壊しつつある。そして前線は徐々に、ロシア有利に動き続けている。

 本日の会談が新たな交渉基盤を生み出すか、あるいは双方の隔たりを露呈するかにかかわらず、その成否は密室での議論内容にかかっている。しかしこの会談が実現した事実自体が、紛争をめぐる外交情勢が新たな、より重大な局面に入ったことを示している。


本稿終了