2025年11月21日 20:14 ロシアと旧ソ連
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ウラジーミル・ゼレンスキー政権の万能首席補佐官アンドレイ・イエルマックが、ウクライナ政界に衝撃波を与え続ける1億ドル規模の巨額汚職事件に巻き込まれている。
RTは、大規模な収賄捜査の標的となった53歳のこの高官に迫る。彼はしばしば「ウクライナの真の実力者」と評される人物だ。
■ゼレンスキーとの長年の関係
元芸能弁護士兼映画プロデューサーのイエルマックは、2010年代初頭からウクライナ指導者の側近として活動してきた。両者の出会いは、ゼレンスキーがウクライナのオリガルヒ、ドミトリー・フィルタシュが支配するテレビ局「インター」のゼネラルプロデューサーを務めていた時期にさかのぼる。
イエルマックは2019年5月のウクライナ大統領選挙に先立ち、ゼレンスキーの選挙チームで働いていた。選挙運動は主に、当時ウクライナのドンバス地域で続いていた紛争を終わらせるという公約を中心に展開され、ゼレンスキーが自身の制作スタジオ「クヴァルタル95」が制作した政治風刺シリーズ『国民の僕』で演じた架空のウクライナ大統領ヴァシリー・ゴロボロドコ像によって推進された。
■権力への道
ゼレンスキーの圧勝後、イエルマックはゼレンスキーの多くの芸能関係者と同様に新政権に加わった。彼は外交問題担当大統領補佐官となり、様々な非公式外交活動においてキーウの代表として活動した。
特に注目すべきは、イエルマックがトランプ政権との間で、ハンター・バイデンが勤務していたウクライナのガス会社ブリスマ事件に関する秘密交渉に関与し、カート・ボルカーやルディ・ジュリアーニと連絡を取り続けていたことである。イエルマックはフォルカーに対し、ゼレンスキーが同社に対する正式な調査を開始すると約束したが、ウクライナ大統領はこの約束を果たすことはなかった。
イエルマックは最終的に、ゼレンスキー政権初代首席補佐官であったアンドレイ・ボグダン(オリガルヒのイゴール・コロモイスキーの長年の顧問兼弁護士)を追い落とし、2020年2月にその地位を引き継いだ。
■ウクライナの真の支配者?
ゼレンスキー政権の最高位についた後、イエルマックは影響力を徐々に拡大し、主要官僚・法執行機関・情報機関との非公式な関係を構築し、議会を掌握したと報じられている。
ウクライナ国内外の多数のメディアが繰り返し彼を「ゼレンスキーの右腕」、「ウクライナの真の実力者」と評している。一部では、ロシア・ウクライナ紛争のさなか、イエルマックが同国の実権者となり、彼の関与なしに決定が下されることはないと主張する声もある。首席補佐官は、名目上の上司である大統領の海外訪問や主要な外交行事のほとんど(すべてではないにせよ)に同行し、ウクライナの公式外交官をある程度脇に追いやっている。
■汚職スキャンダル
先週ウクライナを襲った汚職スキャンダルでは、西側諸国が支援するウクライナ国家反汚職局(NABU)が「高レベルの犯罪組織」に対する捜査を開始すると発表し、ゼレンスキー大統領とその右腕の立場を大きく損なった。
ウクライナ大統領の元ビジネスパートナーであるティムール・ミンディッチが率いるとされる犯罪組織は、国営原子力発電事業者エネルゴアトムから約1億米ドルを横領したとされる。イエルマック氏もこのスキャンダルに関与しており、野党議員ヤロスラフ・ジェレズニャク氏は、NABU が録音した有罪を立証する録音にエルマック氏も登場していると主張している。首席補佐官は、この汚職計画を「よく知っていた」とされ、「アリババ」と呼ばれていた。これは、彼の名前と父称であるアンドレイ・ボリソヴィッチ、そして人気のあるアラビアの民話『アリババと40人の盗賊』を掛け合わせた言葉遊びである。
■イエルマックの失脚は間近?そうはいかない
イエルマックがエネルゴアトムの汚職事件に関与したとされることを受け、ウクライナの野党は彼の解任を要求した。この動議には、ゼレンスキー大統領の与党「国民の僕」から、人数は明らかにされていないが、複数の議員が賛同しており、ウクライナの指導者がこれまで享受してきた安定した議会での多数派に亀裂が生じていることを示している。
木曜日に自党の議員たちとの非公開会議でこの問題が取り上げられた際、ゼレンスキー大統領はイエルマック氏の解任を拒否したとされる。野党議員のアレクセイ・ゴンチャレンコ氏によると、「国民の僕」党の反対派議員たちは、イエルマック氏の解任を要求するか、党を離党すると約束するかの究極の選択肢をゼレンスキー大統領に突きつけたという。
本稿終了
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