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外圧は中国のバブル崩壊の
ペースに影響しない

環球時報 2021年10月7日
GT Voice: External pressure won’t affect
China’s pace of deflating bubbles, By Global Times

 
翻訳:青山貞一(東京都市大学名誉教授)
独立系メディア E-wave Tokyo 2021年10月12日
 

中国恒大 Group Photo: CFP
エバーグランデグループ写真 CFP


本文

 中国の大手不動産会社である永康集団が資産売却により流動性危機を乗り切ることができるかどうかが中国社会で注目されている中、欧米の一部ではすでに世界経済への波及効果について過大評価されている。しかし、だからといって、中国が潜在的なシステミックリスクに対処するペースが乱れることはないだろう。

 米国メディアのブルームバーグが水曜日に報じたところによると、米国のアントニー・ブリンケン国務長官の発言は、中国が中国恒大の流動性危機の潜在的な影響に対処する際に、「責任を持って」行動することを求めているという。

 「中国は主権を持って経済的な決断をしなければならないが、中国が経済的に行うことは、文字通り世界全体に大きな影響を与えることもわかっている。

 確かに、欧米の多くのメディアは、常勝軍団の危機を2008年の米国リーマン・ブラザーズの破綻になぞらえて、中国経済がリーマン・モーメントに直面しているのではないかという疑問を煽っているが、これは誤解を招く恐れがある。

 中国恒大は中国で最も負債の多い不動産会社であり、負債額は3,000億ドルを超えているが、リーマン・ブラザーズの破綻のような事態になると言うにはまだ早すぎる。

 むしろ、中国恒大は債務超過には程遠い状態であり、リーマン・ブラザーズとは決定的に違う。8月末の中間決算発表によると、6月30日時点で、総資産2兆3800億元に対し、負債総額は1兆9700億元(3050億ドル)に膨らんでいる。

 もちろん、中国恒大の危機はまだ続いており、最近の滞納金の支払い失敗は、不動産業界全体にとって厄介な兆候であり、国内経済における不動産業界の経済的重要性を考えれば、川上や川下のセクターにも伝染のリスクが及ぶ可能性がある。しかし、深刻な流動性危機を解決するための資金を調達するために売却を繰り返してきた中国恒大社の運命はまだ不透明だ。

 また、中国が外圧や市場をなだめるために、自らの経済調整のペースを変えることはないことも明らかだ。中国恒大の現在の課題は、中国のデベロッパーに共通する現象である、高いレバレッジと信用バブルを背景にした積極的な拡張に由来する。

 中国当局は昨年、無謀な借り入れを抑制するために、「3つのレッドライン」を発表した。このレッドラインでは、①デベロッパーは資産に対する負債の割合を70%以下、②ネットギアリング比率を100%以下、③現金対短期債務比率を1以上にしなければ、中国恒大のようなデベロッパーはさらなる借り入れを制限されることになっている。

 このように、不動産業界全体が軟化の兆しを見せているにもかかわらず、中国当局が「3つのレッドライン」を堅持しているのは、中国が独自の優先順位を持っており、不動産バブルの崩壊とリスクの低減に焦点を当て続けていることを示している。

 外部からの圧力によって、中国が自らのペースを変えることはない。なぜなら、うまくやってこそ中国は対外的なイニシアチブを取ることができるからであり、そのことは過去の米中貿易摩擦でも繰り返し証明されている。