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★報告書(表紙・はじめに・目次・第1部〜第6部資料編の2以降、奥付) ★資料編第6部1(p1〜31) 報告書の発行にあたり 「はじめに」より抜粋 2011.10.17 都内の清掃工場で水銀濃度が規制値を超える事故が発生した。しかしその原因は解明されず、水俣病を経験した私たちは、改めて今日的な水銀問題に直面することになった。 本報告書は、焼却炉が密集する東京23区の市民が中心となって1年余にわたり情報収集・情報発信を行ってきた活動のまとめである。事業者である東京二十三区清掃一部事務組合や各区が、焼却炉における水銀汚染問題の原因究明や再発防止対策を徹底して行わないことに対する市民の側からの検証である。 「水銀」といえば、日本の公害の原点である水俣病に思いを馳せない日本人はいないはずである。 今から半世紀余りも前に起きた痛ましい公害はまだ本質的な解決をみないまま、2009年に水俣病特措法が議会を通過したことにより次第に人々から忘れ去られようとしている。 人類が初めて経験した食物連鎖を通じての有害物質による中毒事件である水俣病、初めて胎盤を通過して胎児にまで影響が及んだ水銀中毒である水俣病を日本がどう解決するか、世界が注目しているが未だに世界に誇れる対応はできていないのが実態である。低濃度の暴露による被害者は認定もされず、置き去りにされようとしている。 だが、水銀=水俣病ではなく、今も、私たちの身の回りには多くの水銀を含む製品があり、使い終わったものの一部は回収されて再び諸外国に輸出されている。その量は年間100tにも及んでいる。また、廃棄されたものの多くは埋め立てられ、焼却されている。また、世界に目を向ければ、フィリピンや南米諸国の貧しい人々が劣悪な労働環境のもとで水銀を使って金の採掘を行っており健康を害しているばかりでなく、環境・生態系の汚染を続けている。 国連環境計画(UNEP)は2002年に世界水銀アセスメントを行い、水銀は現在も広く環境中に存在していること、世界中に残留し循環し続けていること、その毒性は極めて強く、世界的な取り組みが不可欠であることを明らかにした。 さらに、2013年の水銀条約制定に向けて、水銀に関する政府間交渉委員会(Intergovernmental Negotiating Committee:INC)を2010年6月からスタートさせ、その第二回会議が2011年1月に千葉の幕張で開催された。 日本政府は、国際水銀条約の名称を「水俣条約」とすると主張しているが、日本は水銀について、その名にふさわしい取り組みをしているのかどうか、相次ぐ廃棄物焼却施設からの高濃度水銀排出問題を見れば明らかである。 日本の水銀鉱山は既に閉鎖されて存在していない。製造過程で水銀を発生させる塩素アルカリ工場もすでに閉鎖されている。日本における主要な水銀の発生源は身近に存在している廃棄物焼却施設であると言っても過言ではない。福島第一原発事故によって放射性物質を含む災害廃棄物の焼却処理が問題となっているが、それ以前に日本の焼却炉では水銀すら監視・規制が行われていないのが実態である。 この報告書が全国の廃棄物焼却施設における水銀汚染の実態や国際的な水銀問題について考えていただける一助となれば幸いである。 ◆環境総合研究所は、水銀汚染検証市民委員会からの依頼により、関連調査及び報告書のとりまとめ作業を行いました。 以下は、水銀汚染検証市民委員会からのご挨拶です。 報告書発行のご挨拶 2011年10月17日 2010年6月から7月に相次いだ23区内の4清掃工場の水銀事故。既報のように今年になっても2月目黒、7月千歳〈世田谷〉、9月杉並と続き二十三区と清掃一組は、その原因すら解明できず、今日に至っています。 そうした中で昨年11月25日に水銀汚染検証市民委員会を結成し、2010年度、2011年度の2期にわたり、環境問題に熱心に取り組まれている一部の区議や市議の皆様のご協力で政務調査費や大口カンパをいただき、報告書の作成にこぎつけることが出来ました。本当に有難うございました。 これまで水銀事故に関連して、清掃一組、自治労、NGO、環境省主催の集会が開かれ、私たちも、結成集会での講演会を含め、4度の講演会、学習会を開催し、専門家の知見を得る中でようやくこの報告書の作成に漕ぎ着けました。その過程で私たちが情報開示した開示資料や講演資料などを活用し、これまでの廃棄物問題の中で、社会的にも市民団体の中でも、「常識」とされていた「バグフィルターで水銀は除去できる」「乾電池には水銀は、含まれていない」「水銀で有害なのは有機水銀だけだ」などについて、覆す知見を持つことができました。これは、今問題になっている放射能汚染問題を考えてゆく上で、参考になると考えています。 今回の報告書では、これまでの清掃一組が主張してきた事業者犯人説は否定され、原因として廃プラ焼却によるプラスチック製品〈ゲーム機、おもちゃ、ライター等〉に混入する電池等の水銀混入物の存在と、分別の規律の崩壊による不燃ごみ(蛍光管、電池)の混入を上げました。 ただ水銀がどのような経緯の中で水銀汚染事故(煙突から自主規制値以上の水銀排ガスを出すこと)になったのかは、清掃一組が隠している情報を開示させ、第三者委員会による調査を待たなければいけないと思います。 東京二十三区清掃一組の場合、水銀排ガスの検出装置と自主規制値(自己管理値)をオーバーしたときには、焼却炉を止めるというシステムがあったために、水銀事故がチェックできました。全国の自治体では、ごみの全量焼却や廃プラ焼却を行い、水銀等の有害ごみの独自分別を行っていないところが多くあり、今回の検証報告書の内容から言っても大気放出されていることが予想されます。 大変膨大な量の報告書になりましたが、今後の活動に生かしていただければと考えます。本当にご協力有難うございました。 ** ★本報告書は市民委員会に残部がございます。 仕上り:A4判縦 頁数(全124頁:本編71頁、資料編53頁) 1冊1000円にておわけすることが出来ますので、ご希望の方は、環境総合研究所 までご連絡下さい。2冊以上の場合には送料を別途申し受けます。 ★連絡先 池田こみち ikeda@eritokyo.jp 03-5942-6832 |