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2001/6/22, 6/25現在賛同者 |
参議院国土交通委員会委員各位 | 平成13年6月22日 |
土地収用法改正への不支持の申し入れ |
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NPO/NGO 環境行政改革フォーラム事務局
環境行政改革フォーラム 代表幹事
呼びかけ人代表 青山 貞一
〒141-0021 東京都品川区上大崎4-5-26-4-1108
電話 03-5759-1690 FAX 03-5759-1890
代表者e-mail aoyama@eri.co.jp
HP http://www.01.246.ne.jp/~aoyama
私たちは、環境行政の改革を求めている、民間の任意のグループです。この8年間、環境問題の解決を通じて日本社会を改革していくという旗印のもと、専門家、研究者が地域社会、地域住民、環境NGOと連携し、国、地方また行政、立法を問わず具体的案件にかかわるなかで多様な活動をしてきました。近年においては、公共事業の見直しについても、全国各地で真摯に活動されている住民団体、NGOへの専門的、技術的な支援を展開しています。
環境破壊が深刻化するとともに、環境を破壊して成り立った「公共事業」の負の側面が明らかになっている今日、われわれの環境を、現世代のみならず、世代間公平のために、環境が持続可能な範囲内での開発行為を考え,またそのために環境を改善するべき時代になっています。
不要で環境破壊を伴い、しかも過大な財政負担を伴う大規模 公共事業が今ほど問われている時代はありません。にもかかわらず、大規模公共事業の多くが粛々と進められています。一方、仮にある程度必要な事業であっても、十分な情報開示、環境配慮がなく、 地域住民との間での合意形成も不充分な公共事業が全国津々浦々で進めら れています。
そんななか、国土交通省は、計画段階での情報開示,環境配慮,合意形成が不充分なまま直線的に進められている大規模公共事業の最終段階である土地収用に関連し、こともあ ろうか、土地収用法改正案を国会に提出しており、すでに衆議院を通過するまでになっています。もし、このまま参議院を通過すると、以下に示す取り返しのつかない国民的問題が生ずることになります。
現行の土地収用法で用地の収用が手間取るのは、公共性、公益性のために私権を制限することから、その調整を丁寧に行うことに理由があります。現行法でも、その事業認定、すなわち公共性、公益性の認定プロセスに大きな問題があります。しかし、それを運用でかろうじてカバーしてきましたと言えます。その結果として、それなりの時間が必要となる,すなわち手間取るわけです。改正案ではこれを大幅に簡素化しています。計画段階でまともな情報公開、環境配慮,合意形成がないまま、土地収用段階で手続きを合理化,簡素化したらどうなるでしょうか。これでは日本国憲法によって保障された個人の権利は守られません。これはとんでもない改正となります。
事業の最終段階で土地収用が簡単に行えるようになれば、不要で環境への影響が著しい事業に対する最後の歯止めがかからなくなります。すなわち、この改正案は公共事業のバラマキに直結する可能性があります。たとえば不要で著しい環境破壊をもたらし,さらに自治体財政や国家財政に過大な負担をかける大規模公共事業として、静岡空港建設事業があります。この建設にかろうじてまったをかけているのは、土地収用問題です。日本各地のダム事業、官選道路事業などでも同様な状況があります。もし、土地収用が容易となれば、中央官僚と自治体の首長、それに族議員らの連携によって、どんな大規模事業も公共事業として直線的に推進されることになります。今回の法律改正では,PFI(Private Finance Initiative)など民間資金導入によって行われる事業にも土地収用法が適用されるとしています。
東京都の日の出にある一般廃棄物の広域最終処分場の建設問題で,石原東京都知事らは誤った情報、すなわち日の出最終処分場問題では5700万円の補償金を手渡すのに、その10倍以上の7億円もの費用がかかったことを喧伝してきました。しかし,これは大きな間違いです。一部事務組合から経費の明細を入手し分析したところ、数千万円しかかかっていないことが分かりつつあります。ご承知のように、この一部事務組合は、最終処分場から環境に浸出する水質汚濁やダイオキシン類、重金属など有害化学物質データを、一日単位で膨大なお金を住民側に支払ってまで隠蔽してきた団体です。このようないわば地方自治体に準拠する法人が出す根拠不明確な情報をもとに、世論を操作することは許されません。
土地収用では事業認定、すなわち提案事業の公共,公益性の判断を第三者機関で行うとなっています。しかし、第三者機関(国土交通省の社会資本整備審議会など)が果たして、第三者機関と言えるでしょうか。国の審議会の委員は省庁の推薦のもとで任命されており,同一の委員があちこちの審議会などに名を連ねています。これらの委員は、議員や首長のように、国民から選挙で選ばれていない行政機関や官僚によって選ばれています。そのような場で、計画段階からほとんど公共性,公益性についてノーチェックできた事業の公共,公益性をまともに評価,判断できるとは考えられません。これではまさに事業者による自作自演の事業認定とならざるをえないと言えます。
以上の問題を解決するには、今回の改正を破棄し、むしろ以下の諸点を実行すべきと考えます。
日本では、行政手続法、環境影響評価法、情報公開法など、公共事業の計画,実施における国民の権利を保障し、計画主体,事業主体との間での対話を促すための手続法制が,米国に較べて、いずれも30年以上おくれて制定されました。情報公開法にいたっては、この4月に施行されています。しかも、それらの法律はいずれも省庁提案法案であり、多くの不備を内包しています。つまり、日本では公共事業をとりまく法制については、およそ先進国,民主主義国とは言えない状況があります。本来、改正すべきは公共事業の計画段階で地域住民,国民との合意を形成するための各種の手続法ないし個別事業法であるはずです。それらの改正を抜きにドンズマリにある土地収用法だけ改正し、公共事業を強引に推進するようになれば、日本は民主主義国家とは言えなくなります。行政手続法が成立した際、時期尚早と見送られた行政計画の策定手続段階で住民意見を反映する手続)を再構築し改正することも大切です。また現在,事業実施の段階で行われている環境アセスを、計画段階において社会経済的項目や「事業なし」を含め,さらに明示的な代替案を対象に実施することも不可欠です。これは1997年に制定した環境影響評価法の付帯決議にある、計画アセスないし戦略アセスを早急に制度化すべきことを意味します。
課題1と関連し、土地収用に連なる各種の法定計画、行政計画、さらにはその財政的根拠をなす財政計画(たとえば空港整備五か年計画,港湾整備五ヶ年計画,道路整備5ヶ年計画,水資源整備5ヶ年計画など)の立案過程で計画の変更や後戻りが可能となるような計画立案、策定過程そして意思決定過程を改革することが不可欠です。また、これらのうち事後の計画や処分の前提となり、環境への影響が具体的直接的であるもの(たとえば、港湾計画、特定多目的ダム計画、都市計画決定など)については、それらの策定過程で直接的に経済的利害をもつものだけでなく、環境配慮の面から行政訴訟が可能となるよう、いわゆる処分性と原告適格性の拡大をはかるべきです。そのうえで、裁判所がこの計画の適法性を実効的に監視できるためには、事前に適正な事業評価手続が必要となります。土地収用の事業認定については訴訟で争うことができるが、その裁量は広いため、実効性が低い。その実効性を確保するために、事業の適正な評価手法が必要なことは同様です。それにより公共事業の暴走を公共事業等の計画段階で司法面からチェックする仕組みができます。
以上述べたように、参議院で審議予定の土地収用法改正案は、環境破壊,国家財政、憲法で保障された権利をブルドーザーでなぎ倒す無謀な法改正であり、大規模公共事業がもたらす多くの問題がこれほど国民的な課題となっている最中の改正を、わたくしたちは到底許すことはできません。わたくしたちは、この改正を日本の民主主義の危機と理解しております。
その意味で、わたくしたちは参議院議員各位に、この無謀な土地収用法の改正を思いとどまるよう、強く要望するものであります。
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