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2001/6/22, 6/25現在賛同者

参議院国土交通委員会委員各位 平成13年6月22日

土地収用法改正への不支持の申し入れ

NPO/NGO 環境行政改革フォーラム有志
賛同者(アイウエオ順,*;フォーラムの幹事)

青山 貞一 環境総合研究所所長
環境行政改革フォーラム代表幹事
淺井 功 日本環境リサーチ
阿部 賢一 土木学会会員*
新井 洋子 環境カウンセラー
淡路 剛久 立教大学法学部教授
飯田 哲也 環境エネルギー政策研究所所長
池田 こみち 環境総合研究所副所長,国際市民参加学会会員*
伊瀬 洋昭 自転車と路面電車と舟運のまちづくりフォーラム
井上 真紀子 ごみ・環境ビジョン21「ごみっと・SUN」制作担当
井上 真 東京大学大学院助教授
江川 美穂子 ごみ・環境ビジョン21
大石 和央 農業者、静岡県榛原町議会議員
大鋸 豊久 大鋸造船所
太田 潤七 ごみとダイオキシン問題を考える会
大島 弘三 諫早干潟緊急救済本部
大島 堅一 立命館大学国際関係学部助教授
大沢 豊 日の出の森・トラスト運動事務局長
大羽 康利 渥美自然の会
大林 ミカ 自然エネルギー促進法推進ネットワーク副代表
岡安 隆 目黒区区民
奥野 真敏 成蹊大学大学院博士課程、環境カウンセラー
小倉 正 気候ネットワーク
小倉 崇 熊本大学法学部公共政策学科
尾花 慎二 東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程
桂木 健次 富山大学経済学部教授
風間 駿 WWF等NGO/NPOsuporter
金子 亘 奈良県民
河内 俊英 久留米大学生物学教室助教授
川崎 実 日本ビクタ−(株)環境カウンセラ−、環境計量士
菊池 隆 医学博士、オックスフォード大学統計学部
北岡 逸人 柏崎市議会議員
北山 宏之 伊勢原の自然と環境を守る会
神奈川オオタカ保護連絡会
木原 啓吉 江戸川大学環境情報学科教授
黒田 光太郎 名古屋大学大学院工学研究科教授
小林 正幸 グリーンハンズ
小林 麗子 英国、イーストアングリア大学大学院修士課程
是枝 洋 元法政大学 大原社会問題研究所
近藤 直子 奈良県民
沢野 伸浩 星稜女子短期大学助教授
坂巻 幸雄 日本科学者会議東京支部
嶋 英治 三鷹市議会議員
白木 康憲 使いやすい道路を考える会事務局
陣内 隆之 諌早干潟緊急救済東京事務所
杉山 百合子 日の出の森トラスト地権者・藤沢エコネット会員
鈴木 譲 東京大学大学院農学生命科学研究科教授*
角南 真澄 市民オンブズマンおかやま 公共工事担当
関根 彩子 グリーンピース・ジャパン
高岡 立明 海上の森エコミュージアムネット
鷹取 敦 環境総合研究所主任研究員*
高垣 英明 グループ海上の森探鳥会代表,設楽ダム名古屋代表
高田 昭彦 成蹊大学文学部現代社会学科教授
高橋 ユリカ 「川辺川・東京の会」ルポライター
田口 汎 三浦半島自然環境フォーム代表
田中 徹二 環境と金融リサーチ
田端 裕 大磯町議
辻 淳夫 日本湿地ネットワーク代表、藤前干潟を守る会代表
辻 芳徳 循環型社会システム研究会
つる 詳子 環境カウンセラー
寺尾 光身 名古屋工業大学名誉教授
寺西 俊一 一橋大学大学院経済学研究科教授*
とかしき なおみ 杉並区議会議員
戸田 清 長崎大学助教授、環境社会学
中村 剛 SYS環境調査隊(新横浜)
中畑 利弘 和歌山県漁業協同組合連合会
南部 幹雄 慶應大学大学院政策・メディア研究科修士課程
西岡 政子 「横浜・ゴミを考える連絡会」委員
野村 修身 電磁波問題市民研究会
橋本 久雄 小平市議会議員
長谷川 憲文 ゴミ問題・ゴミ発電を考える会、
板戸町最終処分場建設反対期成同盟
畑 明郎 大阪市立大学大学院教授
服部 美佐子 環境カウンセラー(環境省)
原科 幸彦 東京工業大学大学院総合理工学研究科教授
国際影響評価学会理事*
東中川 敏 Waveney Terrace University of East Anglia
久野 敦司 グローバルブレイン研究所
平松 紘 青山学院大学法学部教授
福田 万里子 久留米市筑後川の水源を守る会
福田 洋一 久留米市筑後川の水源を守る会
星川 淳 屋久島環境政策研究所
藤岡 周二 (株)大喜水質管理センター 代表取締役
藤井 久雄 森林NGO緑友会
藤原 寿和 止めよう!ダイオキシン汚染・関東ネットワーク
松浦 さと子 摂南大学助教授
松本 郁子 地球の友ジャパン 開発金融と環境プログラム代表
松本 悟 メコン・ウォッチ事務局長
三留 央光 三浦半島かんきょうフォーラム代表
真野 京子 環境ボランティアグループままはぷん事務局
水田 哲生 立命館大学政策科学研究科・博士後期課程
百武 巌 グリーン・アース代表
村山 武彦 早稲田大学理工学部複合領域教授*
門司 和夫 環境カウンセラー、
(有)K&M経営コンサルタンツ
森嶋 伸夫 政策学校[一新塾]
柳田 由紀子 緑・住環境どうなる、保谷3・4・6道路ちょっと待ってよの会
山下 博由 貝類保全研究会代表
山根 雅子 高尾山天狗裁判原告、
日の出の森・トラスト権利者
山本 茂雄 (有)山本水産代表取締役社長
山口 泰子 婦人民主クラブ
山崎 圭一 横浜国大経済学部助教授、途上国経済論
山田 佳代子 環境ウォッチTOKYO
吉川 三津子 海部農業と暮らしを守る会
吉田 貴子 東京大学生物生産工学研究センター助手
吉田 央 東京農工大学農学部*
米田 頼司 和歌山大学教員*
鷲尾 雅久 白保の海と大地を未来にのこす全国ネットワーク
渡部 和能 円海山周辺の自然環境を守る市民の会事務局長
綿末 しのぶ 21世紀に八坂川で遊ぶ会 世話人代表

NPO/NGO 環境行政改革フォーラム事務局
環境行政改革フォーラム 代表幹事
呼びかけ人代表 青山 貞一

〒141-0021 東京都品川区上大崎4-5-26-4-1108
電話 03-5759-1690 FAX 03-5759-1890
代表者e-mail aoyama@eri.co.jp
HP http://www.01.246.ne.jp/~aoyama



はじめに

 私たちは、環境行政の改革を求めている、民間の任意のグループです。この8年間、環境問題の解決を通じて日本社会を改革していくという旗印のもと、専門家、研究者が地域社会、地域住民、環境NGOと連携し、国、地方また行政、立法を問わず具体的案件にかかわるなかで多様な活動をしてきました。近年においては、公共事業の見直しについても、全国各地で真摯に活動されている住民団体、NGOへの専門的、技術的な支援を展開しています。
 環境破壊が深刻化するとともに、環境を破壊して成り立った「公共事業」の負の側面が明らかになっている今日、われわれの環境を、現世代のみならず、世代間公平のために、環境が持続可能な範囲内での開発行為を考え,またそのために環境を改善するべき時代になっています。
 不要で環境破壊を伴い、しかも過大な財政負担を伴う大規模 公共事業が今ほど問われている時代はありません。にもかかわらず、大規模公共事業の多くが粛々と進められています。一方、仮にある程度必要な事業であっても、十分な情報開示、環境配慮がなく、 地域住民との間での合意形成も不充分な公共事業が全国津々浦々で進めら れています。
 そんななか、国土交通省は、計画段階での情報開示,環境配慮,合意形成が不充分なまま直線的に進められている大規模公共事業の最終段階である土地収用に関連し、こともあ ろうか、土地収用法改正案を国会に提出しており、すでに衆議院を通過するまでになっています。もし、このまま参議院を通過すると、以下に示す取り返しのつかない国民的問題が生ずることになります。




問題1 公共、公益性の調整の名のもとに憲法により保障された私権が侵害される

 現行の土地収用法で用地の収用が手間取るのは、公共性、公益性のために私権を制限することから、その調整を丁寧に行うことに理由があります。現行法でも、その事業認定、すなわち公共性、公益性の認定プロセスに大きな問題があります。しかし、それを運用でかろうじてカバーしてきましたと言えます。その結果として、それなりの時間が必要となる,すなわち手間取るわけです。改正案ではこれを大幅に簡素化しています。計画段階でまともな情報公開、環境配慮,合意形成がないまま、土地収用段階で手続きを合理化,簡素化したらどうなるでしょうか。これでは日本国憲法によって保障された個人の権利は守られません。これはとんでもない改正となります。

問題2 ノーチェックの公共事業推進で国家財政が破綻する

 事業の最終段階で土地収用が簡単に行えるようになれば、不要で環境への影響が著しい事業に対する最後の歯止めがかからなくなります。すなわち、この改正案は公共事業のバラマキに直結する可能性があります。たとえば不要で著しい環境破壊をもたらし,さらに自治体財政や国家財政に過大な負担をかける大規模公共事業として、静岡空港建設事業があります。この建設にかろうじてまったをかけているのは、土地収用問題です。日本各地のダム事業、官選道路事業などでも同様な状況があります。もし、土地収用が容易となれば、中央官僚と自治体の首長、それに族議員らの連携によって、どんな大規模事業も公共事業として直線的に推進されることになります。今回の法律改正では,PFI(Private Finance Initiative)など民間資金導入によって行われる事業にも土地収用法が適用されるとしています。


問題3 誤った情報で世論が操作されている

 東京都の日の出にある一般廃棄物の広域最終処分場の建設問題で,石原東京都知事らは誤った情報、すなわち日の出最終処分場問題では5700万円の補償金を手渡すのに、その10倍以上の7億円もの費用がかかったことを喧伝してきました。しかし,これは大きな間違いです。一部事務組合から経費の明細を入手し分析したところ、数千万円しかかかっていないことが分かりつつあります。ご承知のように、この一部事務組合は、最終処分場から環境に浸出する水質汚濁やダイオキシン類、重金属など有害化学物質データを、一日単位で膨大なお金を住民側に支払ってまで隠蔽してきた団体です。このようないわば地方自治体に準拠する法人が出す根拠不明確な情報をもとに、世論を操作することは許されません。


問題4 自作自演の公共,公益性判断(事業認定)は間違いである

 土地収用では事業認定、すなわち提案事業の公共,公益性の判断を第三者機関で行うとなっています。しかし、第三者機関(国土交通省の社会資本整備審議会など)が果たして、第三者機関と言えるでしょうか。国の審議会の委員は省庁の推薦のもとで任命されており,同一の委員があちこちの審議会などに名を連ねています。これらの委員は、議員や首長のように、国民から選挙で選ばれていない行政機関や官僚によって選ばれています。そのような場で、計画段階からほとんど公共性,公益性についてノーチェックできた事業の公共,公益性をまともに評価,判断できるとは考えられません。これではまさに事業者による自作自演の事業認定とならざるをえないと言えます。


 以上の問題を解決するには、今回の改正を破棄し、むしろ以下の諸点を実行すべきと考えます。


課題1 計画段階での合意形成を拡充することが正道である

 日本では、行政手続法、環境影響評価法、情報公開法など、公共事業の計画,実施における国民の権利を保障し、計画主体,事業主体との間での対話を促すための手続法制が,米国に較べて、いずれも30年以上おくれて制定されました。情報公開法にいたっては、この4月に施行されています。しかも、それらの法律はいずれも省庁提案法案であり、多くの不備を内包しています。つまり、日本では公共事業をとりまく法制については、およそ先進国,民主主義国とは言えない状況があります。本来、改正すべきは公共事業の計画段階で地域住民,国民との合意を形成するための各種の手続法ないし個別事業法であるはずです。それらの改正を抜きにドンズマリにある土地収用法だけ改正し、公共事業を強引に推進するようになれば、日本は民主主義国家とは言えなくなります。行政手続法が成立した際、時期尚早と見送られた行政計画の策定手続段階で住民意見を反映する手続)を再構築し改正することも大切です。また現在,事業実施の段階で行われている環境アセスを、計画段階において社会経済的項目や「事業なし」を含め,さらに明示的な代替案を対象に実施することも不可欠です。これは1997年に制定した環境影響評価法の付帯決議にある、計画アセスないし戦略アセスを早急に制度化すべきことを意味します。


課題2 計画立案過程の改革とその過程での司法審査の強化

 課題1と関連し、土地収用に連なる各種の法定計画、行政計画、さらにはその財政的根拠をなす財政計画(たとえば空港整備五か年計画,港湾整備五ヶ年計画,道路整備5ヶ年計画,水資源整備5ヶ年計画など)の立案過程で計画の変更や後戻りが可能となるような計画立案、策定過程そして意思決定過程を改革することが不可欠です。また、これらのうち事後の計画や処分の前提となり、環境への影響が具体的直接的であるもの(たとえば、港湾計画、特定多目的ダム計画、都市計画決定など)については、それらの策定過程で直接的に経済的利害をもつものだけでなく、環境配慮の面から行政訴訟が可能となるよう、いわゆる処分性と原告適格性の拡大をはかるべきです。そのうえで、裁判所がこの計画の適法性を実効的に監視できるためには、事前に適正な事業評価手続が必要となります。土地収用の事業認定については訴訟で争うことができるが、その裁量は広いため、実効性が低い。その実効性を確保するために、事業の適正な評価手法が必要なことは同様です。それにより公共事業の暴走を公共事業等の計画段階で司法面からチェックする仕組みができます。



議員各位へのお願い

 以上述べたように、参議院で審議予定の土地収用法改正案は、環境破壊,国家財政、憲法で保障された権利をブルドーザーでなぎ倒す無謀な法改正であり、大規模公共事業がもたらす多くの問題がこれほど国民的な課題となっている最中の改正を、わたくしたちは到底許すことはできません。わたくしたちは、この改正を日本の民主主義の危機と理解しております。

 その意味で、わたくしたちは参議院議員各位に、この無謀な土地収用法の改正を思いとどまるよう、強く要望するものであります。   


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