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2009年度環境行政改革フォーラム
研究発表会2日目(2010/2/7)
全体討議の概要

場所:東京都市大学環境情報学部(横浜キャンパス)3A教室

環境行政改革フォーラム事務局責任編集

3 Mar. 2010


※敬称略

1)青山貞一:
 これから1時間半で議論し、政策提言をまとめて新政権に提案したい。現政権に欠けている政策、こう改正すべきという具体的な立法に対する提案を議論したい。
 外交安全以外の大きな課題としては、昨日の基調講演で指摘したように、廃棄物政策が見えない点、温暖化対策で−6%の目標が達成できないどころか+6%となっているのに90年比−25%を同実現するのかなど。民主党にも関係する利権がある。
 昨日の分科会の座長から、まず提案をしてもらいたい。

2)大島弘三:
 公共事業としてはダムが大きな問題。環境アセスメント以前の政策決定過程に市民・NGOの意見が入らない。誰が政策を決めるのか、いろいろな議論を経ることが重要。政策決定の段階からNGOの意見を入れるような方法を法律の中に含めるべき。

3)鈴木譲:
 大島さんと同意見。市民の声が早い段階から反映されるべき。道路問題で戦っている人も、どういう過程でこんな計画が決まったのだろうと感じている。政権交代には市民の声が反映されることへの期待も含まれていたはず。
 運動論としては、何が敵なのかどこをついたらいいのかを戦略的に考えるべき。金丸さんの発表の「ここを突けばいい」は力強かった。

4)花輪伸一:
 辺野古の問題を中心に話したい。外交防衛ということで情報公開、住民参加がほとんど存在しない。環境アセスメントは過去最悪。費用と頁数だけが過去最高。アセスの方法書に基地の詳細が書いておらず、準備書の段階になってようやくヘリパッドや汚水処理施設の存在が示されている。
 公有水面埋め立て法はご存じのとおりカタカナ法。埋め立て促進法でしかないが、これを保全法に変えるべき。
 日米安全保障とは何かも問題。知日派(ジャパンハンドラー)は基地が出来ないと日米関係が壊れるとデマを流していたが、どうやらアメリカはそうは考えていないということが分かってきた。当事者の国とのコミュニケーション、住民同士の交流も大切。

5)寺尾光身:
 事業が立ち上がる段階から事業について市民に知らされないと動くのが難しいので、これがきちんと出来るようにして欲しい。
(本人追加コメント:徹底的な情報公開で、市民の意見の反映を法律的に担保できないでしょうか。)

 事業仕分けでは防衛関係が事実上全く対象となっていなかった。防衛費は大きいので、これにも目を向けて仕分けを行うべき。
(本人追加コメント:軍隊は人に役立つ生産は行わない。資源を無駄に消費し日常的に環境破壊を行う組織です。憲法に違反する自衛隊という名の日本軍は、できるだけ早く縮小・消滅させなければなりません。財源が極度に不足している今、可能な限り防衛予算を削減し、福祉や環境保護に振り向けるべきです。)

 裁判所に行ったことのある市民には分かるが、市民によるチェックが保証されていない。判決に対する市民の声・問題意識を 反映できない。
(本人追加コメント:行政寄りの判決が多すぎます。ひらめ裁判官が圧倒的に多く、市民に寄り添った裁判官は出世できないことが問題です。最高裁判所が前裁判官の人事を決定していることが原因だと思います。裁判の過程で裁判官を含めた公開公聴会や討論会を制度化することはできないでしょうか。)

 最高裁判事の選任の問題も大きい。形式的には総選挙と同時に行われる国民審査で○×を付けることができるが事実上機能していない。
(本人追加コメント:最高裁判事の国民審査が現憲法制定時から不信任に×をつけ、何も書いていない票は信任票とみなすという実効のない方法で行われ続けている。審査対象の判事一人ひとりについて、信任、不信任、わからない、の何れかを投票者に選んでもらい、信任、不信任、のうち票数の多い方で決める。)

6)田中信一郎:
 道路計画、まち作りの問題。地域をどうやってつくるのかという議論が必要。
 現実は、交通の円滑化が絶対善となっているため、開発、道路が前提条件となっており、環境と比較考量されていない。せいぜい環境配慮をどうするか(しないか)ということしか検討されない。
 地方議会では住民の意見を広く反映せず、少数者の利益を反映するだけになってしまっている。
 フォーラムでは逢坂誠二議員が首相補佐官になり政府へのルートがある。
 市民側としては、経験、知識を高めていくことも重要。政権交代したから新政権に「おまかせ」ではダメ。主体的市民として他の団体との交流を通して経験を生かしていくことが必要。フォーラムもその貴重な場。

7)青山貞一:
 事業仕分けに参加した飯田哲也さんが参加出来なかったのは残念だが、松本悟さんから貴重な話を聞くことができた。基調講演で指摘したように仕分けの前提としてビジョン・政策の明示が重要。

8)鷹取敦:
 分科会の議論から提案。ペット火葬場、建設工事の排水中の有害物質問題など、形式的に「廃棄物」であるかどうかというだけで、規制や許認可等の対象外となってしまう問題がある。形式ではなくて環境への影響の有無・程度で対象とするか決めるようにすべき。
 アセスメントに関しても議論があった。PM2.5の環境基準が設定されることになったが、これがアセスメントや事業の許認可に反映させることも重要。また生物多様性に関して、(辻さんからの報告にあったように)藤前干潟を守った後、鳥や水生生物が減り続けていることから分かるように、ミティゲーションのようにここの生物を別のところに移せばよい、という考えではダメだということが分かったのでこの点もアセス制度への反映が重要。

9)辻淳夫:
 生物多様性条約締約国会議(COP10)を目前にして、名古屋市でも取り組みを始めているが、「生物多様性」という言葉に惑わされているように思う。種の多様性、遺伝子の多様性等、細部に入った議論ばかりだが、現実を多角的にみると危ないところに来ている。全体を見て、今、何をしなければならないか考えなければならない。

10)青木泰:
 当面の問題として4つ挙げたい。(1)日本では廃棄物発電がCO2対策にようになっているが世界の常識では正反対。これに関する交付金をやめさせる。(2)可燃ごみにプラスチックを入れることをやめさせ、混入を削減していくべき。(3)生ゴミの資源化にきちんと取り組むべき。(4)廃プラ焼却が環境にどういう影響があるか、行政にお任せではなくて我々自身で調査していきたい。
 中期的な問題として3点挙げたい。(1)3R推進法案。3Rネットでも検討している。特にReduceに重点を置いている。(2)生ゴミおよび廃プラの焼却禁止。(3)ゼロウェイストを一廃、産廃の双方に。そのための実態把握。

11)池田こみち:
 沖縄、八丈島のような離島の廃棄物対策が本土と同じでいいわけがない。環境への配慮のため特別に対応する必要がある。条例の制定や法律の整備が必要。
 行政調査の評価を行う専門家の問題。現在はいわゆる「御用学者」が現状追認を行っている。例えば、所沢では16万円の謝金を出しA4程度のコメントがあるだけ。第三者的な評価ができる専門家をどう選ぶかが問題。

12)東海林孝幸:
 焼却炉排ガスの測定の問題と大気汚染濃度の予測手法の問題を指摘したい。
 現在のように安定燃焼の時だけ排ガス中のダイオキシン類濃度を測るのではなく、投入した時の不安定な時から測り、さらには常時監視すべき。
 大気汚染濃度予測では、鷹取さんが指摘してきたように地形を考慮できないプルームモデルが依然として使われている。数値解析モデルを使うようにしなければ。

13)森嶋伸夫:
 原科さんが指摘されたように、日本では中国と比較してもアセスメントの対象事業が圧倒的に少ない。そもそもアセスをやると言ってから、国のアセス法が出来るまでに25年もかかっている。情報公開が十分でなかった。
(青山補足:産業界、所管官庁が反対してきたことの責任も大きい。)
 議会の在り方として、千葉市では市民が傍聴でき、質問も出来る。これを全国的に広げるべき。

14)坂本博之:
 訴訟制度、裁判所の問題
 裁判官で環境問題、住民運動に理解を持つ人は少ない。特に東京高裁、仙台高裁は悪質。
 民事訴訟法の改悪で上告受理の枠組が狭められた。最高裁が判断しないので、高裁のやり放題になっている。最高裁への上告の枠を広げるべき。
 最高裁では調査官(身分は裁判官で、エリートコース、行政べったり)が、判例などを調査して最高裁に示す。最高裁判事がこれを鵜呑みにするケースがある。調査官の作った報告書が公開されることはないので何が争点となっているのか分からない。この報告書を公開すべき。
 最高裁判事の任命制度にも問題。裁判官出身が何人、弁護士が何人...と枠が決まっている。日弁連からの推薦でどういう人がいいか議論がなく、一部の人間が決めている。アメリカでは最高裁判事は連邦議会で公聴会でどういう人物か議論されるが、日本でもこれを見習うべき。
 行政訴訟、住民訴訟をもっと住民が使いやすい制度にすべき(数年前に改悪された)。また、自治体だけでなく国を対象とした「国民訴訟」も行えるようにすべき。

15)青山貞一:
 この後、座長以外からも意見をいただきたい。

16)池田こみち:
 全国で30万匹も行政により殺処分が行われている。このようなことが無くなるよう動物愛護法を改正すべき。

17)西島和(弁護士):
 行政訴訟にこそ裁判員制度を導入すべき。

18)落合真弓(福山市議):
 今は住民訴訟で首長あるいは職員の責任だけが問われることになっているが、それを議決した議会・議員の責任も問われるようにすべき。
 政策決定への市民参加の現状にも問題。政策決定過程は、公開が原則にする法規制が必要。
 審議会や諮問機関は形骸化しており、地域の限られた大学の「御用教授」と補助金をもらっているなど市と関係の深い「御用団体」などによる形式的な市民参加が多い。(青山補足:具体的な提案として、委員を選定する過程を変えるべき。)
 文化財保護法などには行政は正しいという前提があるので、保護法違反があっても罰則規定がないので、文化庁の意見を強くするか住民や考古学学会などが直接、文化財登録申請が出来るように改定が必要。地方自治法なども同じく行政に都合良く作られているので住民に軸足を置いた改定が必要。

19)加藤晶子(寄居):
 製造段階からリサイクルできる仕組みが必要。拡大生産者責任。
(青山補足:十分かどうかは別として一応民主党のマニフェストに入っていた。)
 埼玉県に他都県から流入する産廃の規制が必要。
(青山補足:一応、流入規制はある。これを改善すべき。)

20)原科幸彦(大学教授):
 アセス法見直しにあたり、(1)事前調査を禁止すべき、(2)環境省のアセスの審査会にい外部の専門家を入れるべき、(3)対象事業はあまりにも少ないので何万件も対象になるよう広げるべき、対象事業が増えれば事業者の態度も変わる。
(青山補足:辺野古のアセスは重要な変更が150頁も追加されているのにアセス、方法書のやり直しにならない問題がある。やり直しになるかどうかについて、政省令で役人が決めていることが問題。)

21)内田(西東京市):
 都市計画道路の問題に関して。トップダウンでなく住民からのボトムアップに変える必要。現在は議会が取り上げない。
(青山補足:現状では聞き置かれるだけ。タウンミーティングをやるような議員がいない。)

22)脇(所沢市議):
 廃棄物焼却炉についても排ガス中の重金属類の規制値を定めるべき。(大気汚染防止法 第三条第一項 排出基準、施行規則 第五条、別表第三等、ダイオキシン類対策特別措置法等で定められている。ダスト、SOx、NOx、HClの年2回以上、COの連続測定、ダイオキシン類の年1回異常の測定等のみ)

23)金丸(宮崎市民オンブズマン):
 住民監査請求の「1年ルール」の撤廃。
 公務員による裁量権乱用の罰則規定の強化。

24)青山貞一:
 行政不服審査を撤廃すべき。前置主義、「準司法」と言っているが行政がやったことを行政が審査するのでは時間の無駄。その上、一審が飛ばされ、いきなり高裁になるので裁判を受ける権利が侵害されている。

25)柳田由紀子(調布保谷線道路裁判):
 裁判を提起したら事業を一旦凍結する仕組みがないと、裁判を行っている間に既成事実が作られてしまう。
(青山補足:裁判を起こすと全ての事業が止まるのでは難しいが、仮処分で差し止めをもっと簡単に認めて一定期間事業を止める仕組みを作るべき。差し止め要件は緩和されたとはいえ、1年かかって棄却されるなどまだまだ難しい。)

26)池田こみち:
 ダイオキシン類の環境基準の見直しを行うべき。大気の基準0.6pg-TEQ/m3には何の意味もないし土壌の1000pg-TEQ/gも国際的に通用する基準にすべき。排ガスモニタリングの方法、土壌等の溶出試験・含有試験の方法についても改善すべき。

27)中村早苗(金沢エコネット):
 環境基本計画の数値目標が単なるお飾りとなっており達成されていない。実効性のあるプログラム、透明性のある評価が必要。

28)鈴木譲:
 公害等調整委員会、地方の公害審査会が機能していない。公調委では対象を 極めて限定的にとらえており、例えば道路問題は都道府県にまたがっていない かぎり取り上げる余地がない。これらの機関の権限を強化し強制力を持たせるべき。
(青山補足:現在の仕組みは当事者の一方が拒否すれば終わってしまう仕組みで機能していない。)

29)青木泰:
 緑地の保全に関連して農地の相続課税(日本だけと聞いている)の見直しが必要。現在は相続税を土地で物納するので開発されてしまう。

30)森嶋伸夫:
 地方議会の平日夜間開催、土日開催、報酬の削減、市民が直接議会で質問できる制度を。普通の市民が兼業で議会に参加できる仕組みが必要。
(青山補足:サンフランシスコではかつて議員が9名だった。市民が議会で列を作って直接質問し議員が答える仕組み)。

31)伊藤政志(豊橋市):
 全国に産廃銀座が出来ている。自治体をまたがない処理が必要。また、建設できる場所は現在は学校、住宅近くについては制限されているが、水源、農地の近くなども制限すべき。
(青山補足:昨年夏にフォーラムで現地視察した。刑事告発も田子の浦問題ふくめ2件ほど用意しているが、現在の検察では環境にからむ問題で何かできるか疑問もある。検察は一切の情報公開も説明責任も果たしていない。この問題も指摘していきたい。)

32)青山貞一:
 温暖化、エネルギー問題での提案を。

33)村瀬敬子(西東京市):
 市民側の責任として自動車利用を減らすべき。
(青山補足:ライフスタイル、モラルとしての問題提起は分かるが、具体的な提案が欲しい。指摘する際には実名を出すと効果がある。)

34)中村早苗(金沢エコネット):
 市民目線でのライフスタイル転換を提示し、効果があがるという実証実験も行った。そのための人材育成が必要。一方、金沢は公共交通手段が不足し、車社会なので市民の努力だけでは難しい。官民一体の取り組みが必要。

35)青山貞一:
 クライメートゲートと言われる問題を日本のメディアは何故報じないのか。科学者、研究者に「温暖化」というだけで膨大な研究費予算がついている。温暖化を否定するような議論は妨害される。CO2を都市部で測り有用な結果を得たが議論が否定された。自由な議論が行われない。
 依然として大メディアが幅をきかせている。メディアも変えて行かなくてはならない。
 Twitterで直に首相や大臣に意見を伝えられる時代。新しいツールを活かして頑張っていかなければ。

36)青木泰:
 公職選挙法の期日前投票の問題。期日前投票と一般投票が混ぜられて開票されている。期日前投票の箱は事務所に保管されており、中が入れ替えられても分からない。分けて開票すれば、得票率の比でおかしいかどうか判断できる。

37)青山貞一:
 政権交代したらそれでいいのか。政権にオンブにダッコではダメ。誰かに頼めばいいという態度そのものが「お上意識」と同じ。
 今の意見を含めて、予稿集の「前書き」と合わせて、素案を作り2月末ぐらいに政権に出したいと思う。行政訴訟法の改正の時には永田町に50回くらい通って首相経験者も含めた議員と議論した。今回もやっていきたい。
 田中信一郎さんが言われたように市民団体それぞれで努力すべきだが、一方で国会議員、専門家、弁護士とどうつきあい、動かしていくかノウハウをまとめたい。アメリカでは市民のためのマニュアル(How to influence...)になっているが、この日本版を作ってPDFで公表したい。
 こういうことをやっていかないと議論して提案するだけでは実現しない。現場の経験を踏まえてノウハウを集めフォーラムとして出していきたいので是非、具体的に「動かなかったものがこうしたら動いた、改善された」とうい経験を寄せて欲しい。
 1つ1つ現場でやっていかないと行政の「無謬性」の問題は変わらない。環境保全スチュワードシップをみなさんの協力を得てやっていきたい。

38)青山貞一:
 昨年は、私が森嶋さんとともに塾長をしている一新塾で厳しく鍛えた人たち が大勢、首長選を含めて当選した。若い人、女性、見識のある人には、政治に偏見を持たず挑戦して欲しい。市民の仲間から活躍する人を出したい。

39)森嶋伸夫(一新塾):
 昨年は首長選でも大勢当選し、政権交代のトリガーとなったと思う。千葉市長になった熊谷氏はもともと政治と縁がなかったが、旧来型の政治に対して、「ふつう」の自分が市長になれば政治が変わるかもしれないと思って挑戦し、大きな形で波及した。一新塾出身者は国会議員を含めて80名いる。自らが政治家にならなくても、ボラティアで協力している人たちもいる。

40)青山貞一:
 政治の世界は使うべきだし参加していくべき。

41)斉藤真実:
 海外ではマニュアルがあると青山さんがおっしゃったが、国際担当としてお手伝いできれば。
(青山補足:その「日本版」を作りたいと思っている。住民運動、市民活動をやっている人たちは、自分達の問題だけで手一杯になるのではなくて、自分達の経験をシェアしていかなければ。)

42)青山貞一:
 以上、個別具体の提案をいただいたので、これをまとめていきたい。
 プロであることが大切。ERIでもフォーラムでも一新塾でも、小さくても日本を確実に動かしつつある。変な人もいるが、同じ考えを持ったひとだけで同意し合うのではなく、変な人、違う意見を持った人がいて議論を戦わせた方がいい。
 したたかさ、道具立てが重要。アクションを起こすためにはパッション、ミッションが必須。