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2002年4月8日 司法制度改革推進本部 行政訴訟検討会におけるレジメ 青山貞一 環境行政改革フォーラム代表幹事 |
(1)環境公害関連訴訟の実態と司法制度改革の方向性について(資料1参照)
・財政負担と環境負荷・影響をもたらす政策や事業の社会経済的な<必要性>、科学的な<妥当性>、適正手続的な<正当性>を、第三者的に評価することが問われている。その手段としての司法司法の役割。
・ひとたび著しい影響、被害が起きてから事後的に救済することに対し、予防的、未然防止的 な措置をとることの社会的意義、行政行為の費用対効果の司法審査の役割。
(2)国、自治体の政策形成過程、意思決定過程の課題について
・財政や環境に著しい影響を与える行政計画、法定計画の立案過程における情報公開や住民参加、社会的合 意形成の場、機能が少なく、あっても形骸化あるいは機能不全している。そのなかでは、たとえば土地の強制収用を円滑化するための法改正を行うことは全体のバラン スを欠く。
・わが国でも行政手続法、情報公開法、環境影響評価法が制定されたが、本場の米国の制度運用と似て非なるものとなっており、行政行為の適正化(透明化、公平化、合理化、費用対効果向上など)に寄与していない。
・たとえば、行政文書を訴訟の証拠として用いる場合、現行の情報公開法の運用では、行政庁が開示を内部決定してから実際に請求者に開示するまで1ヶ月から2ヶ月弱の時間がかかっている。同時に国会議員経由で請求した場合には数日で入手できることが多いことが多い。 また政策形成過程にかかわる情報開示は例外的にしか認められていない。
(3)行政行為にかかわる紛争の問題解決の手段としての司法審査の役割の強化について
・問題解決の方向としては、大きくは立法による行政行為のコントルールがある。次に個別の行政計画、法定計画、事業、財政の各関連法の改善(適正手続導入、行政裁量極小化、基準 明確化など)とともに、各種手続法の運用段階での司法審査の強化が求められる。
・他方、政策、計画、事業の立案過程での環境影響評価法、条例の役割が期待される。だが、わが国の場合、アセスの実施時期が遅すぎ、対象行為が個別事業に限され、代替案検討の義務づけがないことから制度そのものが機能不全となっている。これを機能強化するためには、実施時期、対象行為、代替案検討義務などを明確にし、原告適格性を拡大し、行政訴訟(司 法審査)の提起を容易とさせる改善が必要である。
(4)米国における行政行為に対する司法審査(手続法)の実態について(資料2参照)
・米国の国家環境政策法(NEPA)は、1969年にジャクソン連邦上院議員らの議員提案により制定され1970年より施行された広義の意味の環境アセスメント法(手続法)である。
・広義と言う意味は、同法が個別の事業だけでなく政策、計画など行政行為全般を対象に政策及び意思決定過程の妥当性を情報公開(透明性)と適正手続(正当性)をもとに司法審査できることにある。
・1977年末までに行われた連邦行政行為の環境アセスメント全体の約9%(938件)が提訴を受け、その32%に原告適格が認められ、さらにその25%(1/4)で原告側の主張が認められている。
(5)米国における行政行為に対する司法審査(実体法)の制度と実態について
・米国ではNEPAのような手続法とは別に、個別の環境や健康にかかわる連邦法、たとえば大気汚染防止法、水質汚濁防止法のような実体法においても、市民訴訟(客観訴訟)が条項として盛り込まれており、各種環境法に訴訟が起こせる仕組みとなっている。しかも、それら市民訴訟では、市民側勝訴の場合には、(6)に示すように弁護費用及び証人等の専門 家の費用の回収が可能となっている。これに対し、わが国では、いわゆる客観訴訟は、地方自治法における「住民訴訟」のみであり、その住民訴訟制度も本通常国会で大幅に改正されている。
・わが国においても、環境や健康にかかわる各種行政法の中に、住民訴訟、国民訴訟と言った客観訴訟を組み込むことにより、国民、住民の行政訴訟機会を増やすことが望まれる。
(6)行政訴訟の専門的・実務的支援の課題と解決の方向性について(資料3参照)
・環境関連の訴訟は、行政、民事を問わず科学的、専門的なものが多い。行政側が多くの人材、費用、情報を有しているのに対し、住民側はすべての面で厳しい状態にある。したがって行政訴訟における公平性を確保するためには、住民側を専門的、実務的に支援する人材と資金の確保が大きな課題となる。
・具体的な解決の方向性としては、住民側が行政に勝訴した場合、行政側が住民側の弁護費用 とともに、専門家が証拠、意見書、陳述書などの作成に要した費用を一定基準のもとに負担することが望まれる。
・米国の行政訴訟ではこれが実現しており上述のNEPA訴訟で有名な環境訴訟専門家集団のNRDCやEarthJusticeなど弁護士や専門家を擁するNGO/NPOの財源負担を軽減している。
・なおこれについては、日本弁護士連合会も、「国民が利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える 民事司法のあり方」(2000年6月13日)の「片面的敗訴者負担制度」の項で、行政訴訟、国家賠償訴訟にも上記の趣旨に類する内容を実現するよう提案している。
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