ヘレン・トーマスさんの話をもう一度聞こう! 

 米国のイラク攻撃に関連して昨年末の毎日新聞の外報面に注目すべきインタビュー記事が掲載された。インタビューの相手は、ケネディ政権以降、ホワイトハウス詰めの記者を務め、大統領が敬意を表し、いつも最初に指名することで知られる女性記者、ヘレン・トーマスさん(82歳)(※1)だ。ヘレンさんは2000年に57年間勤務したUPIを退社、現在コラムニストとして第一線で現役で活躍している。インタビューに答えたヘレンさんの言葉は、きわめて深く重い含蓄を持つ。そのインタビュー記事を読んで欲しい
Q 対イラク戦争は回避できますか。
◆戦争のにおいを感じる。イラクをにらんだペルシャ湾への軍隊や戦闘機の派遭は口先だけ脅しではない。イラクが大量破壊兵器の開発問題で、どう対応しようと関係ない。米国はすでに戦争することを決めている。ひどいことだ。

Q イラク攻撃は正当性がありまずか
◆湾岸戦争後の過去11年間、イラクは完全に封じ込められてきた。米国はイラクの動きはすべて把握している。大量破壊兵器をめぐる議論はひどいものだ。世界で8カ国が核兵器を保有している。これらの国は「脅威」とはされず、いつか持つかもしれないという程度の国が「最大の脅威」になってしまった。全く論理的じゃない。

Q 米国社会のムードをどう説明しますか。
◆米国民はイラクのフセイン大統領が敵だと思い込まされ戦争は不可避だと受け止めている。なぜ今戦争する必要があるのか米国民はその疑問を持つべきだ。私は多くの戦争を見てきた。敵として戦った相手はすべてかつては米国の友だった。米国は違う敵をつくりあげては罪のない市民を殺してきた。しかし、戦った相手は本当の敵だったのか? 米国民はこういう議論をすること嫌がる。

Q 対イラク戦をめぐるメディアの状況は。
◆ホワイトハウスでの記者会見制度は重要だが、メディアは今、政府に強く影響されている。ジャーナリストが悲しいほど単純となっている。

Q 対イラク戦は米国にとって何のための戦争でしょうか。
◆英国の歴史家ば「永久の友好国などない。永遠の権益があるのみだ」と語った。米国にも見事に当てはまる。米国の「永久の権益」とは油、権カなどだ。 でも、米国は世界のいじめっ子になってはいけない。私が愛する米国は、そんな国ではないはずだ。

出典:2002年12月30日、毎日新聞朝刊