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                        平成12年11月1日

公明党
 代 表 神埼 武法殿
 副代表 浜四津敏子殿
 政審会長 坂口 力殿
 衆議院議員各位
 参議院議員各位

原子力立地地域振興特別措置法案への公明党の不支持表明の要望申し入れ

拝啓

 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

 私たちは、環境政策、エネルギー政策、廃棄物政策を国民の立場で研究し、政策提言している非営利・非政府組織、環境行政改革フォーラムの有志です。申し入れ者はいずれも第三者的立場の研究者、科学者、活動家であり、環境、エネルギー面からわが国の社会変革を促すべく日夜活動しているものであります。

 貴党とは、環境アセスメント法案はじめダイオキシン類対策特別措置法案、自然エネルギー促進法案など重要な環境、エネルギー関連法案の制定過程でさまざまな有機的な連携をいただき、また法案制定、修正にご努力頂きましたことを感謝しております。

 さて貴党への今回の申し入れは、自由民主党の一部議員による議員提案法案、「原発地域振興法案」に公明党として「不支持」を表明いただくことにあります。

 ご承知のように、この法案は、現在、先進諸外国ではいかに原子力発電への依存を減らし、省エネルギーと自然エネルギーの開発利用を促進するかに国をあげて取り組んでいるさなか、わが国においては、現行の電源三法による手厚い税制的、財政的支援にくわえ、さらに原発立地周辺地域で道路、鉄道、福祉、教育関連の施設などを建設する場合に国の補助率を引き上げると言う、いわば時代錯誤の法案であります。また自治体が上記の公共事業にからみ起債、縁故債などの借金をした場合、その返済のかなりの部分を地方交付税で手当てすると言うものです。現在でも原発関連施設が立地する基礎自治体や都道府県には電気料金に上乗せされている電源開発促進税から年間1600億円が交付されていますが、今回の法案はさらに国庫の一般会計から当該自治体や周辺自治体にまで補助金を出すと言うものであります。

 既にご承知のように、欧米では脱原発に向けた各方面の取り組みや政策がメインストリームとなっており、政治の大きな関心事となっています。米国ではプロポジション、イニシアティブ(州レベルでの住民法案投票)により原発の新規立地がことごとく否決され、また電力会社の株主も核廃棄物処理の安全性と経済性がいまだ見えない原発を見放しているのが実態といえます。一昨年の12月には米国連邦エネルギー省やフロリダ大学などの主催によりフロリダ州マイアミで米国の原発関連産業がいかにしてこれまで蓄積してきた技術やノウハウを原発関連施設などの安全な解体処理や汚染除去に活かしていくか、また透明性を保ち地域住民の合意を得ながら核廃棄物処理や廃炉の汚染除去を行っていくかについて国際シンポジウムが開催され、脱原発時代に向けた官民をあげた具体的な議論と取り組みが既に始められています。同国際会議には、米国政府から環境総合研究所に招聘要請があり、池田こみち(環境総研副所長、環境行政改革フォーラム幹事、原子力安全委員会主催の第一回原子力円卓会議招聘者)が参加し発言してきました。

 一方、スウェーデンでは1980年に行われた原発是非の国民投票結果をうけ昨年11月30日に、平常運転していたバルセベック原発が閉鎖されました。これは環境を優先する先進国の国民と政治が下した英断であり、それに呼応して自然エネルギーへの傾斜を強める大胆なエネルギー政策の変化の先頭に立つものと言えます。またこの10月、中華民国{台湾)の行政院は脱原発体制を選択し、建設中の第4原子力発電所(2基、各135万キロワット)の建設を中止すると発表しました。原発は核廃棄物の処理処分を含めれば、環境問題、安全問題の観点だけでなくエネルギー会計学の面から、また国家の財政面からも、また投資効率の面からもひきあわないことが先進諸国の今や常識となっています。であるがゆえに立法、政策の過程での透明性の確保、住民参加がきわめて重要なものとなっているのです。

 そのなかで、日本だけが高速増殖炉(FBR)「もんじゅ」の深刻な事故発生にもかかわらず開発促進しようとしており、昨年の茨城県東海村におけるJCO事故及びそれによる2名の現場作業者の事故死にもかかわらず、原発立地をさらに推進しようとしているのが、本法案であると言えます。これはもやはエネルギー政策、施策ではなく、昨今、国民の重要関心事となっております大規模公共事業による国費のバラマキにすぎないと考えられます。

 わが国でも現在、250名を超す超党派の国会議員により自然エネルギーの開発利用を促進する法案が議員提案されようとしています。その背景には、一昨年ベースでのわが国のエネルギー関連研究開発予算(費用)の73%が原子力関連につぎこまれ、自然エネルギーの研究開発にはわずか3%しかつぎこまれていない現実があります。

 21世紀にむけ、持続可能な社会発展をとげるためには、これ以上原子力にエネルギー供給を依存することなく、省エネルギーの推進によって化石燃料の使用を削減しつつ、自然エネルギーの普及・利用に国、地域、国民をあげ取り組むことがわが国に課せられた大きな課題であると私たちは基本的に認識しております。また多くの国会議員諸氏の認識もそこにあると推察致します。政府としても、総合エネルギー調査会総合部会を10年ぶりに立ち上げ、エネルギーの総合的な見直しを始めたところであり、部会冒頭の長官発言、会長発言にもみられるように、原子力ありきの政策そのものが問われている最中です。かかる状況のなかで 原子力立地地域振興特別措置法案は、まさにわが国の国際的孤立をいっそう深めるものであり、環境への負荷、国民の健康と安全をリスクにさらす政策であると考えます。

 国の法案制定、政策立案でキャスティング・ボートを握られております貴党が、まちがってもこのような法案の共同提案者とならないよう、当該分野の研究者、科学者、活動家として強く申し入れるものであります。 

敬 具

  

要望申し入れ者 2000.10.31  現在
環境行政改革フォーラム(NPO/NGO)有志 アイウエオ順
青山 貞一 環境総合研究所所長,環境行政改革フォーラム代表幹事
阿川 琢磨 三重大学大学院生物資源学研究科博士課程在籍
阿部 賢一 土木学会会員
池田 こみち 環境総合研究所副所長、国際市民参加学会員
稲垣 雅彦 (協)街づくり総合研究所専務理事
(株)開発計画研究所取締役都市開発部長
牛島 聡美 弁護士、環境NGO、 ニューヨーク在
大内 加寿子 アスベストについて考える会
大羽 康利 渥美自然の会代表
小倉 元熱帯林行動ネットワーク
大林 ミカ 「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク副代表
川田 龍平 東京経済大学学生
鬼頭 秀一 東京農工大学農学部教授(科学技術社会論・環境倫理学)
小林 グリーンハンズ
沢野 伸浩 星稜女子短期大学 助教授
陣内 隆之 諫早干潟緊急救済東京事務所
諏訪 亜紀 ロンドン大学 University College London環境計画学科博士課程在籍
鈴木 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
高田 昭彦 成蹊大学文学部教授(環境社会学)
鷹取 環境総合研究所主任研究員
淳夫 日本湿地ネットワーク代表、藤前干潟を守る会代表
津田 恵子 静岡県島田市議
寺尾 光身 元名古屋工業大学教員
寺西 一橋大学大学院経済学研究科教授・日本環境会議事務局長
戸田 長崎大学環境科学部助教授
野村 修身 電子技術総合研究所主任研究官(エネルギー部門)
長谷川 憲文 ゴミ問題・ゴミ発電を考える会
長谷川 公一 東北大学大学院文学研究科教授(環境社会学)
原科 幸彦 東京工業大学大学院教授,国際影響評価学会理事,日本支部代表
政野 淳子 フリージャーナリスト
松浦 さと子 摂南大学経営情報学部助教授(社会情報論)
松本 郁子 地球の友ジャパン 開発金融と環境プロジェクト代表
松本 メコン・ウォッチ事務局長
村山 武彦 早稲田大学理工学部複合領域助教授
森嶋 伸夫 政策学校[一新塾]
安田 由美子
吉田 東京農工大学専任講師
米田 頼司 和歌山大学教育学部助教授
森林NGO緑友会(事務局:藤井久雄)

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