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2001/8/27 |
2001.8.24中央環境審議会地球環境部会
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青山 貞一 | 環境総合研究所所長、東京工業大大学院総合理工学研究科(環境政策)、中央大理工学部(交通環境政策)、早稲田大教育学部(総合講座VI)、法政大工学部機械工学科(環境科学)非常勤講師 | 男 54歳 |
池田こみち | 環境総合研究所副所長、国際市民参加学会会員 | 女 52歳 |
大林 ミカ | 環境エネルギー政策研究所副所長 | 女 36歳 |
向達 壮吉 | NPO法人レインボー・グリーンコンシューマー学習部会代表 | 男 51歳 |
諏訪 亜紀 | ロンドン大学ユニバーシティーカレッジ博士課程 | 女 33歳 |
鷹取 敦 | 環境総合研究所主任研究員 | 男 34歳 |
田口 汎 | 地球温暖化防止活動推進員横須賀・三浦地区会議(含鎌倉)代表 | 男 66歳 |
田中 優 | 自然エネルギー推進市民フォーラム理事 | 男 44歳 |
戸田 清 | 長崎大学環境科学部助教授 | 男 44歳 |
野村 修身 | 電磁波問題市民研究会・代表 | 男 60歳 |
二見 孝一 | 美しい球磨川を守る市民の会事務局長 | 男 37歳 |
星川 淳 | 作家+屋久島環境政策研究所 | 男 49歳 |
安田 節子 | 食政策センター ビジョン21 | 女 |
綿末しのぶ | 21世紀に八坂川で遊ぶ会世話人代表 | 女 49歳 |
環境行政改革フォーラム事務局 〒141-0021 東京都品川区上大崎4-5-26-4-1108 電話 03-5759-1690 FAX 03-5759-1890 メール aoyama@eri.co.jp ikeda@eri.c.jp WWW http://www.01.246.ne.jp/-aoyama |
私たちは、環境行政改革を求めている、民間の任意のグループです。この9年間、環境問題の解決を通じて日本社会を改革していくという旗印のもと、専門家、研究者が地域社会、地域住民、環境NGOと連携し、国、地方また行政、立法を問わず具体的案件にかかわるなかで多様な活動をしてきました。近年においては、公共事業の見直しについても、全国各地で真摯に活動されている住民団体、NGOへの専門的、技術的な支援を展開しています。
このたび、中央環境審議会環境部会「目標達成シナリオ小委員会」及び「国内制度小委員会」におかれましては、地球温暖化を現実の課題と捉え、同件に関する我が国のこれまで及び将来の政策を批判的に検証されていること及び次の諸点に敬意を表します。
(1)「地球温暖化対策推進大綱」によって特定された技術的・その他の対策を「具体的に推進する制度、資金等が十分整備されている状態ではない(シナリオ小委員会まとめ1頁)」という認識を基に、「個々の対策の導入を促す国内制度が構築される(同2頁)」必要性につき(若干遅しとはいえ)言及されている点
(2)世界的な温室効果ガスの安定化のためには、京都議定書の第一約束期間以降も抜本的な対策が求められる点について言及されている(国内制度小委員会まとめ9頁など)点
(3)削減ポテンシャル分析・シナリオ分析などにおいてデータをできるだけ公開し、透明性の確保に努める態度が見られる点及び数量モデル等、第三者による検討が導入されている点
一方で原子力発電の取り扱い、技術的選択肢の評価方法、政策分析のあり方などについての考慮が不完全な部分も見受けられます。
当パブリックコメントは貴部会両委員会の取りまとめに対し上記のような一定の評価をおきつつ、その中間取りまとめに対し、環境行政フォーラムの有志としての見解を提供するものであります。
なお、環境行政改革フォーラムについては、別途、設立の趣旨,目的、活動などを資料として添付致します。
6-7頁
1) 「B 運輸部門:ガソリン車は一般に燃費の観点ではディーゼル車に劣ること、また、窒素酸化物削減のための触媒装置が、一酸化二窒素の増加をもたらすなど、必ずしも両立しない場合があり、地域の大気保全の必要性に促した対策を考える必要がある。」
ガソリン車の問題点を明確にしている点は評価できるが、同時にディーゼル車の問題点も併記されるべきではないかと考える。
ディーゼル車は燃費の点ではガソリン車に比べて優位にあるが、その窒素酸化物や粒子状物質などの排出物による大気汚染に関しては抜本的な解決が図られているとは言えない。「地域の大気保全の必要性に促した対策」の名の下で、これら物質による被害が隠蔽されることを懸念し、両論併記を希望する。
7頁
2) 「C 民生部門:地域によっては、産業部門の工場廃熱やバイオマスエネルギーによる電気、熱が供給され、排出量削減に資することになる。」
この文面自体には問題はないが、我が国の民生部門における熱需要を考える場合にはその根拠となる全国・または地域別熱需要統計が必須である。熱需要統計の充実のためにできる施策を是非考えられたい。
3) 「民生部門における太陽光発電の電力分は、間接的にエネルギー転換部門の化石燃料消費を軽減することができる。」
民生部門における太陽光発電だけが化石燃料消費の軽減に資するわけではない。太陽熱利用などもエネルギー転換部門の消費を抑えることができるはずで、ここは「民生部門における太陽光発電・太陽熱利用などの自然エネルギー利用は、間接的にエネルギー転換部門の化石燃料消費を軽減することができる」等とするべきではないか。
4) 「D 非エネルギー起源のCO2,CH4,N2O:廃プラスチックの高炉利用のように、産業部門や民生部門、農業・畜産・林業における廃棄物抑制・リサイクル等を推進することによって、廃棄物部門の温室効果ガス排出量を削減できる。また、廃棄物やバイオマスをエネルギー利用することによって、エネルギー転換部門の化石燃料使用量を削減することになり、温室効果ガスを間接的に削減することができる。」
廃プラスチックの高炉利用及び廃棄物のエネルギー利用についてはそれに付随する大気汚染の懸念が完全に払拭されているわけではなく、慎重な対応が必要である。
一方、わが国は一般廃棄物の焼却量(1993年時点で50,300千トン/年、、焼却率(約75%)で世界第一位を占めるなど、ゴミ焼却主義の立場をとってきた。周知のように廃棄物の焼却はダイオキシン類、重金属類はじめさまざまな有害化学物質を環境大気中に排出するだけでなく、化石燃料以外の発生源として二酸化炭素を排出する。環境総合研究所(東京都品川区)がCOP3時点で行った推計では、平成2年度から平成7年度の平均で日本のCO2排出量全体を100とした場合、約3.8%もCO2を排出することが分かっている(注1,2)。その意味で、わが国の場合,このような廃棄物の減量化、再使用などにつとめることにより「焼却主義」を脱却することが温室ガス排出量削減の上からもきわめて重要なものとなるだろう。
27頁
5) 「○風力発電の経済性を確保するための普及促進策や市場形成方策が必要現在、風力発電の経済性を確保するには、補助金の獲得と電力会社の買い取り(2,000kWを超える場合では入札にて落札)が条件になり、これが満たされない場合には、発電事業の成立は困難である。(中略)このような入札枠の設定は、系統への影響を抑制する目的と経済性を確保するために実施されており、今後は、どの程度までなら、導入可能であるか技術的、経済的な検証が期待される。」
系統連係に関しては、自然エネルギー発電者や、系統連係運営者の間で技術的問題等の情報をシェアする仕組みを拡充し、入札枠が、系統連係運営者によって一方的に通知されるのを防ぐべきである。なお、技術的問題に関しては現在も「系統連係技術要件ガイドライン」が公表されているが、自然エネルギー導入に照らし、ガイドラインの妥当性を継続的に点検するべきである。
なお、自然エネルギー促進のために必要な電力系統連係強化上の技術的対策を取るべきであり、かつ、そのために必要な経済的対策等(財政負担ルール見直し、財政支援やそれを可能にする財政構造調整を含む)などを検討すべきである。ちなみにEUの再生可能エネルギー指令は、発電事業者と系統連係運営者、また、先行発電事業者と後発発電事業者の間における費用折半を認める予定である(注3) 。
また、EUの同指令は自然エネルギーの系統への優先的連系を求めているが、同様な要件は我が国でも意味があるだろう。
27頁
6) 「米国では、電力の自由化による低価格燃料(化石燃料)への集中を防ぎ、自然エネルギーの普及を図るために風力を含む再生可能エネルギーの導入を割り当てる手法(RPS:Renewable
Portfolio Standard)の制度が複数の州にて実施されたり、検討され始めている。」
細かい点であるが、RPSはアメリカの州だけで導入が検討されているのではない。ベルギー・デンマーク・イタリア・イギリス・オーストリア・スウェーデンなどのEU諸国でも導入が予定・または検討されている。
ただし、イギリスを除く上記全ての国々において、RPS導入の前段階としてまず固定価格補助が導入されてきたことを見逃してはならない(添付資料参考)。RPSにおける購入義務量(クォータ)は、実質的な自然エネルギー導入上限として機能してしまう可能性があるため、この制度を自然エネルギー揺籃期に用いることは慎重であるべきである。自然エネルギーの導入のためにはまず「自然エネルギー促進議員連盟」で提案されている法案などに基づき固定価格補助を行い、一定量の自然エネルギー供給量を確保した後、漸次段階的にRPS+証書取引へと移行する方法などが考えられる。
28頁
7) 「電力市場の自由化に伴い、買取り義務づけによる価格保証的な支援制度に替え、オランダのように「グリーン証明書」を発行し、再生可能エネルギーの普及を支援する制度も存在する。」
電力市場の自由化と買取り義務づけは必ずしも相反しない。買取り制で有名なドイツでも電力市場も開放が進んでいる。買取り制で必要なコストは、消費者に一定価格請求し、それによる資金プールから電力会社が回収すれば、電力会社の負担は平等に軽減され、自由化の流れにも反しない、というのがこれまで経験されてきた買取り制に関わる基本的メカニズムである。
取引可能グリーン証書(Tradable Green Certificate)は、自然エネルギーによって生じた電力の価値を、「電力そのものの価値」と「自然エネルギーの価値」に分け、「自然エネルギーの価値」部分を電力市場とは別の市場で取引しよう、というものである。このシステムのメリットは、例えば遠隔地取引の簡便性(北海道で発生した自然エネルギーを九州の最終需要家が求める場合、「自然エネルギーの価値」を示した証書の購入によって需要が満たせる可能性がある)などにある。しかし、同制度は必ずしも電力市場自由化を前提にするものではない。むしろ、政策的介入によってグリーン証書市場が形成される場合もあり、グリーン証書は、規制的市場とも整合するシステムである。
このため上記表現(「電力市場の自由化に伴い、買取り義務づけによる価格保証的な支援制度に替え、オランダのように「グリーン証明書」を発行し、再生可能エネルギーの普及を支援する制度も存在する。」)は不適切である。
28頁
8) 「(自然エネルギーの)国内での本格的普及のためには、これらの支援制度に関しても検討していく必要がある。」
自然エネルギーの促進を第一義に考えるならば、ドイツ式のkWhあたりの固定価格補助が最も有効な施策であることが世界的にも証明されている。自然エネルギー導入揺籃期にある我が国において、固定価格補助は非常に有意義な施策である。
グリーン証書については、我が国では既に日本自然エネルギー株式会社によるグリーン証書制度が発足している。しかしながら、グリーン証書の購入は税法上「寄付」と見なされ、グリーン証書購入が「経費」扱いであれば受けられる税金控除が受けられない。このためグリーン証書購入をためらう企業もあるという。グリーン証書の支援制度の第一歩として当件に関わる税法改正を行うべきだ。
55頁
9) 「太陽熱温水器・太陽光発電の導入:家庭用のエネルギー供給設備として、太陽熱温水器、太陽光発電設備による削減効果が期待できる。太陽熱温水器については助成が行われてきたが、近年販売量は急速に低下している。」
家庭用太陽熱利用機器に関しては、確かに助成が行われてきたが、その規模や制度が果たして適正であるか検討すべきである。
第一に、昭和55年に創設された「ソーラーシステム普及促進融資制度」は平成8年度に終了している。ソーラーシステム導入に効果のあった同制度の終了が近年の販売量低下の背景にあることを認識すべきである。
第二に、現在でも継続しているものに、NEDO「住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業」による住宅・建築用システムへの設置価格補助がある。同事業の平成12年度の予算は14億円であるが、この予算すべてが太陽熱利用機器に用いられたわけではないし、同事業はあくまでもエネルギー効率をモニタリングする家庭を対象にしたもので、一般住宅向け助成とは若干質が異なる。
2010年における太陽熱利用の政府目標値は450万kL石油換算となっているが、現在の導入量は98万kLに過ぎず、同目標を達成するための家庭用太陽熱利用機器に関する施策は不足しているという認識から今後の施策を考えるべきである。
75頁・76頁
10) 「○ 資源リサイクルによるCO2削減
排出抑制、再使用、再生利用とは、基本的には廃棄物量を減少させるために、有用な資源をできる限り循環させて活用する取り組みであるが、温室効果ガス排出量の算定にあたって対象となる化石燃料由来の廃油、廃プラスチックの焼却量を減少させるだけでなく、物質循環により新規の製造必要量を減少させたり、廃棄物からエネルギーを取り出すことにより従来の化石燃料消費量の現象に資するなど、エネルギー面においても温室効果ガス削減に資する。」
この部分の趣旨には多いに賛同する。ただし、76頁の図78で扱われている資源にはより多くの種類が含まれるべきではないか。例えば、鉄スクラップのリサイクルなどは、エネルギー消費量削減に大きく寄与する可能性があるにもかかわらず図78では資源として特定されておらず、違和感を感じる。
110頁
11) 「表38 (注):原子力の利用率向上については、計画ケースで利用率が84.2%になると見込んでいる一方、削減ポテンシャルとしては、低格熱出力運転への変更と,連続運転期間の長期化及び定期点検期間の短縮化により、利用率が90%になる場合を想定して算出している。なお、原子力の利用率を90%とする対策を実施した場合は、表中の数字を基にした算定により、追加的削減費用は約1,870億円削減されるとともに、この対策により削減することが可能となれば、目的達成のために必要なより高額の対策を導入する必要が無くなる。」
原子力の利用率を90%と想定しているが、過去5年の平均利用率は約80%であり、この実績に比べて90%の想定値は異常に高いと言えるだろう。連続運転期間長期化や定期点検短縮化は安全性確保の面からの問題が指摘されており、これらを実行する上での社会的コンセンサスもできていないにもかかわらず、これらを前提とした数値(利用率90%)を想定値として採用している点は非常に問題である。
128頁
12) 「さらに、市場形成を計る段階においては、電力の小売り事業者や最終需要家が購入する電力の一定割合を自然エネルギーにすることを義務づける「クォーター制や、自然エネルギーからの発電量毎に発電事業者が発行する証書を電力の小売り事業者や最終需要家間で取引させる「グリーン証書」などの導入も検討していく必要がある。」
ポイント8)で既に触れたが、「グリーン証書」自身は既に日本自然エネルギー(株)によって発行され、最終需要家等によって購入されている。問題は、これら民間発行のグリーン証書をどこまで国が支援するか、また国が新たに独自に類似の試みをする場合、どのように整合性を取っていくのかという点にある。また、将来的に「グリーン証書」を市場で取引する「グリーン証書取引(Tradable Green Certificate)」制度を整備していくのかという点が課題として認識されるべきだろう。
129頁:
「表49 エネルギー転換部門の対策技術導入にあたっての課題と考えられる対策手法の選択肢(その1)」
13) 原子力発電の利用率向上「安全性の確保と住民の理解」
「運用方法と定期点検に関する制度の見直し」
ポイント11)に同じ。
14) 火力発電における燃料転換(のために考えられる対策手法の選択肢として)「天然ガス供給のためのインフラ整備」
燃料転換を促す上では、天然ガス供給のためのインフラ整備は非常に重要である。しかしながら、例えば天然ガスパイプラインなどのインフラ整備には巨額のコストがかかる。このため現在のところガス会社は天然ガスパイプライン整備に積極的ではなく、もしインフラ整備を行うならば国家としての財政支援が不可欠といわれている
(注4)。
表49で「考えられる対策手法の選択肢」としてインフラ整備が挙げられているが、これは既に「制度的・社会的課題」として認識されている。「考えられる対策手法の選択肢」では、インフラ整備という課題を、どのように財政的その他の政策によって支援していくのかを特定していく作業が行われるべきだっただろう。
135頁
「表53 運輸部門の対策技術導入にあたっての課題と考えられる対策手法の選択肢(その1)」
15) 「物流の効率化・貨物の輸送効率の改善」
選択肢に上げられていないものに、港湾輸出入貨物の国内陸上輸送距離の削減があるだろう。海運輸送に関しては三大中枢港湾への集中を背景とし、これら大規模港湾を起点とした国内陸上輸送が行われている。最終消費地に近い港湾が貨物輸送の起点として選択されるような施策が取られるべきである。
16) 「公共交通機関利用・公共交通機関の活用(バス路線の整備)」
公共交通機関の活用におけるバス路線の整備は非常に重要であるが、公共交通機関はバスに限ったものではない。鉄道・路面電車・新都市交通システムその他公共交通にはさまざまな形態が考えられ、地域に合わせてこれら公共交通を推進していくことが必要である。
また、公共交通機関の活用に関して考えられる対策手法の選択肢には、料金水準の引き下げに加え、公共交通機関を利用するればするほどクレジット(単位)をためることができるマイレージ・システムなども考えられるだろう。
なお、対策手法の選択肢として「既存鉄道の輸送能力の増強」が認識されたのは有意義である。旅客輸送能力については、ヨーロッパ大陸側諸国ではダブルデッカー式の電車が多く導入され、着席通勤率の向上に寄与している。我が国でも大都市圏内等でダブルデッカー式の車両を目にするが、主にグリーン車などに用いられている。一般の乗客に対する公共交通の魅力を高めるためには、着席通勤率を向上させるなど、現在の「痛勤」をより一層緩和する措置が必要だ。
136頁
「表54 運輸部門の対策技術導入にあたっての課題と考えられる対策手法の選択肢(その2)」
17) ライフスタイルの変更
購入車両の小型化・消費者の大型車への志向に関する「考えられる対策手法の選択肢」に、「消費者への普及啓発」とあるが、単なる普及啓発にどれくらいの効果があるのか疑問である。
貴報告書134頁にて、「税制の改正により大型車(3ナンバーの普通車)が増加してきたという経緯がある。」と問題の背景を特定しているにもかかわらず、これらが「考えられる対策手法の選択肢」に反映されておらず、大変不思議である。消費者の志向を大型車から小型車へシフトさせる手法として、税制改正を視野に入れるべきである。
137頁
「表55 家庭部門の対策技術導入にあたっての課題と考えられる対策手法の選択肢」
18) 「食器洗い機」
が対策技術として挙げられているが、これが温暖化ガス削減に本当に貢献するのか不明である。配布資料の技術対策シートによると、温水での食器手洗いを温水による食器洗い機に転換した場合を想定している。しかし、食器洗い機は年間を通して温水を用いると思われるのに対し、手洗いの場合には温水を利用しないケースも多々あるだろう。食器洗い機導入により、洗わなければならない食器量が少ない場合でも、食器洗い機に頼る状況なども考えられ、想定されている削減量が確保できるのかには多くの不確定要素が伴うと思われる。また、食器洗い機は電気を利用する。電気は物理的に最も高価なエネルギー利用形態であり、その導入はむしろ抑制されるべきである。
138頁
「表56 業務部門の対策技術導入にあたっての課題と考えられる対策手法の選択肢」
19)この表だけに限った点ではないが、「考えられる対策手法の選択肢」が「特になし」とされている対策・技術が見られるが、これらに対して考えられる選択肢が本当に無いのか、より詳しく検証すべきである。例えば大都市圏での土地の不足を背景に「都市緑化による都市気象の改善効果」に対する選択肢がないとされているが、土地利用計画・都市計画などの観点から同問題に対応する方策はあるはずだ。
143頁
「表60 廃棄物分野の対策技術導入にあたっての課題と考えられる対策手法の選択肢」
20) この表に限った点ではないが、対策手法として普及啓発活動が挙げられている場合、普及啓発にどれだけ実効性があるか検討すべきだ。生分解性プラスチックの利用による排出抑制対策の選択肢として普及啓発活動が挙げられているが、現在の市場浸透率を引き上げるには、財政的支援などが必要なのではないか。
144頁
「表61 工業プロセス分野の対策技術導入にあたっての課題と考えられる対策手法の選択肢」
21) エコセメント
エコセメントは、一般廃棄物処理処分対策の一環として「焼却灰」や「汚泥」などを原料としてつくられているが、エコセメント中のダイオキシン類、重金属などの有害化学物質の含有や鉄筋コンクリートにおいて鉄筋の腐食問題など改善すべき課題がある。
171頁
22) 「「対策技術の評価に基づく経済性評価」では、6ガスすべてを対象にして、原子力発電所の新規立地を7基と想定し、個々の対策技術による削減量と費用の積み上げにより評価を行っている。」
原子力新規立地は、シミュレーションの前提として扱われており、経済性評価の対象とはなっていない。しかし本来ならば、原子力新規立地も温室効果ガス削減技術的対策の一手法であり、この経済性も評価の結果に反映されるべきである。
原子力に関しては、開発・立地・廃棄物処理・解体まで莫大な金銭的・環境的費用がかかり、その費用の多くを国が補助している現状があるにもかかわらず、その費用と効果を分析しないのは片手落ちであろう。
また、原子力の増設について7基が前提とされているが、現在建設中のものは4基であり、さらに3 基を増設可能としている根拠を特定すべきである。
19頁:
23) 「広義の産業部門における対策の大きな柱として経団連自主行動計画が実施されており、フォローアップも行われている」
経団連自主行動計画参加団体の排出量は全排出量の大きな割合を占めるが、同時に、経団連に属していながら自主行動計画に参加しない業種や、計画に則ったレビューを十分に行っていない業種もあるといわれ(例:運輸・通信業その他)、自主行動計画参加団体の拡充及びフォローアップの厳格化を望む。
39頁:
24) 「化学物質については「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」によって、工場・事業場で使用している化学物質の環境中への放出についてその量を把握し、情報公開を義務付ける仕組みがある。地球温暖化対策は、我が国にとっても、政界にとても、化学物質対策と同様に極めて重要な課題であり、温室効果ガスについても、同様の仕組みによりその排出量を把握し、公表する制度を導入することが適当である。」
PRTR制度の温室効果ガスへの応用は適切な施策である。なお、PRTRによる排出物質量については即地情報提供が望まれるが、現状では化学物質に関して集計区分しか行われていない。温室効果ガス排出量に関する情報は、将来的には国内・国際排出量取引などの基盤ともなり得るものであり、その即地情報が集計され、公表されることを望む。
52頁・54頁:
25) 「表13・表14:追加的制度別対策・削減量一覧」及び今後の審議の方向性について
両表では、「部門別の排出削減に関わる主な制度的手法」が特定されており、諸技術的選択肢の整理に役立つ。ただし、諸技術的選択肢がどの種類の手法に属するかを認識するだけではなく、それらをどのように組み合わせ、効果を得るかについてのさらなる考察が必要である。国内制度小委員会の目標のひとつに「ポリシーミックスによる政策パッケージ」の検討が挙げられているが(貴報告書2頁)が、単なる技術選択肢の羅列とその整理に留まらないポリシーミックスの提案のためには、それぞれの技術選択肢を可能にするための政策を検討しなければならない。またその場合の政策は、単に「インフラを整備する」「補助金を導入する」といった対策手法の特定にとどまらず、税制や社会面などのさらに広い観点からの展望(例えばインフラや補助金の場合にはそのための資金をどこから用意するべきか、既存のエネルギー関連予算の再配分が必要であるか等)についても踏み込んで議論すべきである。
また、政策によっては2010年までに効果が現れないが、中・長期的観点からは早期に実行に移すべきものなどもあると考えられる。今後の審議においては、短期・中期・長期の目標それぞれを特定し、それら目標達成のために必要な資源配分・政策実施時期を洗い出すなどの戦略的議論も行うべきである。
以上。
注1) | 環境総合研究所、我が国のCO2排出量、平成9年5月 |
注2) | 青山貞一、池田こみち、大西行雄、鷹取 敦、宮崎正信、台所からの地球環境、pp.193, ぎょうせい、1998年5月1日 |
注3) | Commission of the European Communities, (2000), "Amended proposal for a DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on the promotion of electricity from renewable energy sources in the internal electricity market", COM (2000) 884 final, 2000/0116 |
注4) | 三菱総合研究所(2000年)「国土幹線ガスパイプライン」東洋経済新報社 |
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